【記者解説】167ページの訴状に対し国答弁書わずか7ページ 辺野古抗告訴訟 今後の進行に注目 沖縄


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部=2022年3月17日午後0時14分、航空機より撮影

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、防衛省の設計変更申請を県が不承認とした処分を巡り、県が国を相手に起こした抗告訴訟は、県に訴訟を起こす適格性があるかどうかが大きな争点の一つだ。埋め立てを強行する国に対し、県は軟弱地盤の改良工事が完遂できるかや、埋め立てのための法律の要件を満たすかの司法判断を求めてきた。ただ、裁判所は中身を判断せずに訴えを退けることが多く、県にとって厳しい状況が続いている。

 裁判所が国交相裁決の違法性を認めて取り消せば、国は軟弱地盤がある大浦湾側の埋め立てができない。新基地建設の完成には県の承認が必要で、不承認の効力は大きい。

 県の不承認に、沖縄防衛局は行政不服審査制度を使って国交相に審査請求し、国交相は不承認の取り消し裁決をした上で、承認するよう求める是正の指示を出した。こうした国の手法の適法性を問うため、県は抗告訴訟のほか、2件の関与取り消し訴訟を提起した。

 抗告訴訟で県は、不承認の正当性と国交相裁決の違法性を直接的に問う。訴状は164ページに及んだ。一方、国側の答弁書はわずか7ページ。県の訴えが不適法だとし、裁決の適法性については触れずに裁判を速やかに終えるよう求めている。

 8日の初弁論で、県側代理人は「裁決の本質を見極め、真摯(しんし)な審理を求める」と望んだ。裁判所が実質的な審理に踏み込むか、今後の進行が注目される。

(前森智香子)