辺野古抗議中に逮捕の82歳男性、腕にはあざ 当惑しながらも現場に立ち続ける理由、幼少期に見た光景とは 沖縄


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辺野古新基地建設に対する抗議行動中に警察官に腕をつかまれ、あざができたという仲本和男さん=7日、那覇市

 【辺野古問題取材班】1944年8月、疎開船「対馬丸」と同じ船団で県外へ向かう途中、米軍の攻撃で対馬丸が沈没する様子を目撃した沖縄市平和ガイドネットワークの仲本和男さん(82)=那覇市=が、定期的に名護市辺野古の新基地建設に反対する活動に参加している。戦争の恐怖を体験したからこそ、新たな戦禍につながる基地建設に強い思いで反対する。

 戦前は今帰仁村で暮らした仲本さんは4歳の頃、母親ときょうだい3人と共に対馬丸船団の一つ、和浦丸に乗船して九州へ向かった。途中、対馬丸が沈没する中で、自らが乗船する和浦丸は「ジクザクに航行し、いつ狙い撃ちされるか怖かった」と振り返る。

 疎開先の熊本県で終戦まで生活した後、沖縄へ戻り、本島北部と中部の中学校で社会科の教員を務めた。現在は平和ガイドを務める傍ら、新基地建設に反対する抗議行動にも参加している。

 仲本さんは1日、名護市安和の琉球セメント桟橋前の道路で辺野古新基地建設工事に抗議していた際に警察官への公務執行妨害容疑で逮捕された。それでも抗議活動の現場に立ち続ける。「子どもたちの尊い命が奪われた戦争を二度と繰り返してはならない」。初めての逮捕に当惑しながらも、辺野古新基地建設や安保関連3文書の閣議決定など「戦争につながる全てに反対する」と力を込めた。(松堂秀樹)

 

■沖縄県警「適正な職務執行」

 名護市辺野古の新基地建設現場の周辺では、これまでも基地建設に反対する抗議行動の参加者が公務執行妨害容疑などで逮捕される事案が発生してきた。1日に逮捕された沖縄市平和ガイドネットワークの仲本和男さん(82)は、警察官に抵抗したことを認めつつ「逮捕は過剰だと感じる。抗議行動を萎縮させようとしているのではないか」と話し、辺野古新基地建設に抗議する決意を新たにした。

 逮捕時、定期的に通う名護市安和の琉球セメント桟橋前の道路で、土砂などを積んだ大型車両の前をゆっくり歩いて時間を稼ぐ牛歩で抗議していた仲本さん。道路を横切ろうとしたところ、警察官が歩道に移動させた。脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)で脚がしびれる症状がある仲本さんは、警察官に詰め寄られた衝撃でよろめいたが、いったん立ち止まり抵抗した。翌日午後釈放されたが、仲本さんの腕には1週間たってもあざが残っているという。

 県警は今回の逮捕について「適正な職務執行だった」としている。

 刑事訴訟法が専門の沖縄国際大の中野正剛教授は「警察官が男性の安全確保のため誘導するつもりだったのなら適正な『公務』で、それに抵抗したのなら公務執行妨害に当たる可能性がある」とする一方、「抗議行動を排除する目的があったのなら『公務』には当たらない。しっかりと調べる必要がある」と指摘した。(松堂秀樹)