終わりない業務に疲弊 殺到する「コロナ特例貸し付け」申請、精査しきれず 現場のジレンマも 沖縄


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 コロナ禍で生活困窮に陥った世帯に生活資金を貸す特例貸し付け制度。国の方針で迅速な対応が優先された一方、窓口の各社会福祉協議会は、申請者の生活実態把握や十分な相談ができない課題もあった。ジレンマに悩みながら殺到する申請業務に追われた社協職員は多い。

 沖縄県社会福祉協議会が入る那覇市の県総合福祉センターの一角。貸し付け資料のファイルが積まれ、申請者数の多さがうかがえる。制度が始まって以降、県社協も各市町村社協も「現場体制が整う間もなく」申請業務に忙殺された。

 特例貸し付けは2020年3月に始まった。全国社協設置の有識者会議の報告書によると、当時の安倍晋三首相らが国会で「償還(返済)免除要件付き特例貸し付け」などと発言したことから、返済への理解が不十分なまま申請が相次いだ。

 申請者は当初、給与明細などで減収を証明していたが次第に簡略化。減収の大まかな金額を書いて提出しても申請可になった。生活費などの支払いに困る世帯へ早く貸し付けた半面、精査は十分にできなかったという。

 ある社協によると、コロナ禍前から慢性的に生活費が不足しているとみられる世帯からの申請も多かった。制度は当初、20年7月までの受け付け予定だったが、10度も延長された。社協職員は本来の生活支援に力を注げないまま、終わりの見えない業務に疲弊。現場職員らは人員拡充などを求めつつ「これからも困った世帯に寄り添った継続的支援が必要だ」と訴えている。

(金良孝矢)


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