映画「カミングアウト物語」LGBT考えるきっかけに 監督も当事者 桜坂で18日から


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 LGBTがテーマの映画「沖縄カミングアウト物語~かつきママのハグ×2珍道中!特別編~」(2021年、松岡弘明監督)の上映が18日から24日まで、那覇市の桜坂劇場である。主人公のかつきママ(川田美輝さん)の出身地・那覇市での公開に合わせ、現在のLGBTを巡る状況など追加シーンを入れた「特別編」として上映する。

自身の体験を交え映画の魅力を話す松岡弘明監督=15日、那覇市の琉球新報社

 「沖縄カミングアウト物語―」は、新宿二丁目ゲイバーの店主・かつきママが、ゲイだと家族に打ち明けた日を振り返り、那覇市を巡って家族や友人と、今の気持ちを語る姿を収めたドキュメンタリー作品。

 松岡監督もLGBT当事者だ。ゲイだとカミングアウトしないまま、2008年に母を亡くした。当初は自身の選択を良かったと思ったが、年月がたつにつれ「一番心を通わせていた母親に打ち明けなかったことに、むなしさや後悔の気持ちが膨れあがった」という。約10年後、映画とは別の映像作品の取材でかつきママの「カミングアウト物語」を聞いた。

 「自分も母に打ち明けていたら、母がどんな表情をし、どんな対話をして、どんな結末を迎えたか。知りたかった物語がそこにあった。実際にかつきママの両親に会い、家族が分かり合うまでの道のりを聞きたいと思った」と、映画製作を決めた当時を振り返る。

 松岡監督は「子どもから打ち明けられたとき、1人だけで、親だけで抱え込まなくて大丈夫だと知ってほしい」と話す。一方で「カミングアウトは一つの選択。映画はそれを推奨するわけではない」とも力を込める。

 監督自身、母の死後、父にカミングアウトした。父からは「育て方が悪かった」など強めの言葉を言われたが、全面的に否定するような空気ではなく、その後、自らLGBTの情報を集めて学んでくれていた。今では活動を応援してくれている。「僕は打ち明けて良かったと思う。でも皆がそうとは限らない」と考えを巡らす。

 当事者も周囲の人も「大切な人のことを考えるきっかけにしてほしい」と来場を呼び掛けた。

 上映開始は18日から24日まで午後12時40分。
 (藤村謙吾)