元毎日新聞記者で、沖縄返還交渉の際に日米間で密約があったことを報道した西山太吉(にしやま・たきち)さん=北九州市=が24日午前7時35分、心不全のため同市内の福祉施設で死去した。91歳。山口県下関市出身。告別式は家族、近親者のみで執り行う。
慶応大大学院修士課程(国際政治学)修了後、1956年毎日新聞入社。横浜支局、東京経済部、政治部などを担当。1971年、沖縄返還に際し、軍用地原状回復補償費400万ドルを日本が肩代わりする密約について情報を入手し、報じた。
密約を否定した佐藤栄作政権下で、国家公務員法違反容疑で逮捕・起訴され、1審は無罪だったが2審で逆転有罪となり、最高裁で確定した。1審判決後の74年1月に退社した。その後、福岡県の青果物卸会社で定年まで勤めた。
2000年代に入り、米公文書で密約の存在が相次いで証明された。09年12月に、国を相手に日米両政府間の密約文書の開示を求めた訴訟では、1審は勝訴したが、2審と最高裁で敗訴した。
山崎豊子氏の小説「運命の人」のモデルにもなった。昨年12月に体調を崩し、療養していた。
著書に「沖縄密約|『情報犯罪』と日米同盟」「沖縄密約」「決定版 機密を開示せよ―裁かれた沖縄密約」「記者と国家 西山太吉の遺言」など。
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