沖縄県那覇市小禄に「字小禄ハワイ会館」という建物がある。戦後、困窮する故郷の人々を支援しようと、ハワイ在住の旧小禄村小禄、田原出身者らが送った義援金を基に建てられた。小禄、田原とハワイの交流はその後も続き、5日にハワイで開かれるハワイ小禄字人会の発足100周年式典には沖縄から18人が参加する。
字小禄財産管理運営会の資料によると、ハワイ小禄字人会は1923年に7家族で結成された。豚を飼い、餌の残飯を集めることで差別されることもあり、銀行の融資も受けられなかったという。移住者は「タノモシ」(模合)などで経済的にも精神的にも助け合いながら困難な生活を乗り越えていった。
戦後1949年にはハワイ小禄字人会が生活に苦しむ小禄、田原の人々を助けようと、学用品や運動用具、ミシン、辞典などを送った。52年には1万ドルの義援金を寄付した。それを基に53年に小禄小学校の図書館、55年に小禄公民館、田原公民館が建設された。
新たな小禄自治会館が建設された後、旧小禄公民館は老朽化で使用できない状態になっていた。ハワイの字人会に末長く感謝の意を示すために大改修をし、「字小禄ハワイ会館」に改称した。現在も旗頭の倉庫として活用している。
字小禄財産管理運営会の高良勝専務理事(63)は「ハワイ会館が公民館だった頃、敬老会などさまざまな行事をここでしていた」と振り返り、「ハワイからの支援は小禄の発展に大きく貢献した」と強調する。ハワイ会館には52年にハワイからの訪問団が贈った、御酒(みき)用のたるも保管されている。
昨年11月には世界のウチナーンチュ大会に合わせて小禄、田原出身の県系人を招いた歓迎会を小禄自治会館で開いた。財産管理運営会の高良正幸理事長(74)は「小禄からはブラジルへの移民も多い。若い人たちに歴史を伝え、小禄、ハワイ、ブラジルの交流を今後も深めていきたい」と話す。
今回、正幸さんと勝さんは沖縄に残るが、理事の高良幸秀さん(63)らがハワイを訪ねる。幸秀さんは「現地にいるいとこらと連絡を取りたい」と交流を楽しみにしている。
(伊佐尚記)