辺野古是正勧告拒否 知事冒頭発言全文 一問一答要旨


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知事冒頭発言全文
 国土交通大臣が行った辺野古新基地建設に係る公有水面埋立承認取消処分を取り消せとの勧告などについて報告する。
 1点目に是正の勧告の拒否について。本日、去る10月28日付けで国土交通大臣が地方自治法第245条の8第1項の規定により行った「辺野古新基地建設に係る公有水面埋立承認取消処分を取り消せ」との勧告について、勧告には従わない旨の文書を同大臣宛て発送した。

 県は、本年7月の第三者委員会の検討結果を受けてこれを精査した結果、承認には取り消し得べき瑕疵(かし)があるものと認め、取り消しを行った。従って、本件取り消しは適法と考えており、勧告に従うことはできない。
 2点目に公開質問状について。承認取り消しに対する審査請求、審査請求手続における執行停止決定および代執行手続きへの移行といった一連の政府の対応において、沖縄防衛局長のみならず、国土交通大臣までが、自らの都合に応じて立場を使い分け、さらに警視庁の機動隊員を大量投入するなど、まさしくなりふり構わず移設を強行しようとしている。
 政府は、これらの対応について、通り一遍の言葉ではなく、国民、県民に対して明確に説明責任を果たすべきであると考える。そこで県では、本日、国土交通大臣に対して、この点についての公開質問を行うこととし、公開質問状を送付したので、報告する。
 3点目に環境監視等委員会の寄付等について。昨日、本県から沖縄防衛局長に照会した環境監視等委員会への寄付および報酬に対する回答があった。既存の議事要旨などを基に委員会の指導助言機能は適切に果たされていると主張するのみで、委員就任後に寄付金が大幅に増額された委員がいるにもかかわらず、議事録の公表もない。
 国民、県民の疑念は払拭(ふっしょく)されるどころか、ますます深まっていくのではないか。あらためて、十分な内容の調査結果の報告や、議事録の公開などを強く求めていく。今後も、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えだ。
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一問一答要旨
 -公開質問状を併せて送った背景を説明してほしい。
 知事 法律の内容を分かる人はよく分かるが、国民や県民がなかなかよく分からないということがある。公開質問をやることで、ぜひ分かりやすく説明してもらいたいということだ。
 行政不服審査法に基づく執行停止は国民の権利を保障するものだ。国は米軍基地を造るわけで、私人であるわけではない。こういうことだけでも国民の理解のしにくいところだ。なおかつ代執行手続きも取られた。国土交通大臣が審判役とプレーヤーの両方を使い分けて、国がやっている。この辺の説明が大変あいまいだ。公開質問状を出すことによって、多くの国民や県民がそのことについて、理解ができるように出した。
 -国は是正を指示してくると思うが、これにも従わないということになるか。
 知事 勧告拒否については第三者委員会の報告を精査し、この結論に至った。指示がある場合にもそういったことをベースに、判断していくことになると思う。
 -公開質問に国は答える義務はない。あえて出した狙いは何か。
 知事 政府は国民、県民に自らが行うことの理由や考え方を説明する責任がある。今回は大変分かりにくい。目くらましのような、法律というのはこういう形で運用されるのかと、国民に不信感を持たれるようなことになりかねない状況だ。法治国家としての品位が疑われるだけではなく、説明責任も果たすことができないのだと認めることにならないよう、しっかりと説明する必要があるだろう。
 今までのような紋切り調の回答では、国家権力を背景に、ただただ問答無用で物事を進めていくということになりかねない。
 -機動隊を大量投入したことをどう感じているか。
 知事 さきほど粛々という言葉を久々に使ったが、やはり理由のいかんを問わず、いま代執行手続きなどをやる中で、行政不服審査法で、執行停止などをして、工事を着手するということをやりながら、代執行手続きをやるということなので、そういう中に警視庁からの100人の警察官を投入するというのは、まさしくその意味では、県警からの要請もあるかもしれないが、まさしく国全体の意思として、辺野古に基地を造るという大きな前提の中で物事が進んでいると思う。
 そういったことを見る沖縄県民の目は厳しいものがあると思う。このようなことを繰り返すと、むしろ県民の理解を得るとか、あるいは溝が縮まるとか、いろんな意味で物事の前向きなものがそういったものに関して、遮断をして、強行して基地を造りあげていくという姿勢が、大変憂うべき事態になりはせんかと心配をしている。
 -国は承認取り消しが「危険性の継続につながる」「米国との信頼関係に悪影響を及ぼす」と説明している。反論はあるか。
 知事 普天間の危険性除去が一番に挙げられているが、それについては認識は一緒だ。言葉そのものには。5年以内の運用停止は去年の2月を起点として、それから1年と8カ月くらい。全く手つかず。米国からはそんなこと聞いたこともないと。この状況を見ると、本当に日本政府が普天間の危険性除去について、普天間の住民に対して申し訳ない、一刻も早く危険性の除去をしなきゃならんというようなことでやっているのか、大変疑問がある。
 辺野古がこれから以降も最低10年かかるが、場合によっては15年くらいかかるかもしれない。この10年、15年は普天間の固定化と言わないのか。10年、15年くらいは差し支えのない普天間住民の危険性ということになるのかどうか。
 強制接収が原点だと言った一つは、老朽化し、危険性があるからといって、県内にそういう形で求めるということを唯一という形でやるのはいかがなものかということも含めてだ。普天間の危険性除去と、辺野古が唯一というようなものは、そういう意味からもつながらない。
 -(国の対応が)違法でないなら説明できると、国を試しているとも思える。
 知事 行政法学者に対して「間違っている」と言うくらいの自信を持った説明をしなければ、今のような形で、ごり押しをするというような形でやっていくというのは大きな不信感、日本の国の在り方にも大きな不信感が出てくるのではないかと思っている。
 なおかつ、執行停止をして、承認が復活し、工事ができるようになったというような状況でさらに代執行だ。代執行というのは本来、工事を止めて、結論が出るまで工事をしないというのが代執行手続きの大きな柱だ。それを執行停止をすることによって工事ができるようにし、代執行は代執行で裁判の判決をあおぐ。私たちの主張しているものは、環境保全という意味でも大変大きな意味合いを持っているので、工事着手によって、あの美しいジュゴンのすむサンゴ礁まで、いろんな小動物なんかもいる中で、それを蹴散らして、一定期間工事をした中で判断を下すというのも、この法律の両方の趣旨を国は曲げてもここに基地を造るというふうにやっているのではないか。「粛々」という言葉は引き下げたが、行動という意味ではもっと「粛々」になり強権的に出てきたなという感じを持っている。
 -自治体から国に公開質問状を出すというのは極めて異例だ。出さざるを得ない理由は何か。
 知事 大変大きな問題をはらんでいる。まずは地方自治という意味でも、今のようなやり方で本当に日本は憲法で保障されている地方自治をしっかり守りながら物事を進めているのかが大きな論点の一つだ。
 もう一つは(沖縄は)日本の安全保障を担う場所だ。基地機能から言っても、日本の安全保障を沖縄が担っている部分はたくさんある中でこういったことが行われている。これも国民全体で安全保障を考えてもらいたいという意味で、公開質問することによって全国民にその意味合いを知ってもらいたいということがある。
 もう一つは沖縄の尊厳がかかっている。辺野古の新基地ができたら、160ヘクタールに及ぶ国有地になる。今までの沖縄の基地は保革を乗り越えて、土地の買収を拒否したことにより、約7割方が民有地、行政有地で自らの意思決定が及ぶが、これから以降、国有地として、私どもはフェンスの外からただ声を上げるだけになる。沖縄県が北部の振興も含め、観光立県としてどう生きていくか。美しい海を守っていくためにどうしていくか。こういったことも含めて何ら手を出しきれない状況が出てくる。日本国民全体で考え、なおかつ県民にも分かりやすく説明してもらわないと、とても民主主義国家としての成り立ちとしておかしいとはっきり申し上げたい。
 -異例な手段を取らないと国はまともに答えないと見ているのか。
 知事 国民がよく見て判断すると思う。グアムに飛んだり、いろんなことをされた。防衛相が同じ日に佐賀空港に米軍のオスプレイは配備しないと。脅しなのか、沖縄の基地負担軽減のためにやっているのか何なのかよく分からない。その1カ月ほど前にはCV22を沖縄の負担軽減に気を使うので、横田に配備すると言っていたのが基地の訓練は沖縄を含んでやるということを後になって話す。こういったような、私たちからすると子どもだましのやり方、目くらまし戦法でやってきている感じがする。何にも説明しないということは国民、県民がそれをよく見る大きな視野を持っていると思っている。私たちがこうして質問して国がどう対応するかは国の姿勢の問題なので、私から申し上げることはない。