後輩たち、世界に羽ばたいて アフターコロナ 崎原末子(フレンズ&5代表取締役)<女性たち発・うちなー語らな>


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 2019年12月、中国で新型コロナウイルス感染症の第1例が発見され、わずか数カ月で世界的流行となった。新型コロナの感染者数はここ数カ月減り続け、落ち着いたようにみえる。

 世界中が何かにおびえていた。あの時の街の静けさ、息を殺して静かに行動していた。併せてネットではワクチン接種への賛否、はたまた陰謀論などが多く発信され違和感もあった。

 しかし、コロナ禍で“自粛”を迫られた日々はこれまでの自分自身の行動や生活を省みる、とても良い時間だったと思う。さまざまな場面で社会活動を制約された、コロナ禍の窮屈な生活は森羅万象、道端に咲く花や夜空の星々など、生きとし生けるものの存在におのずと関心が行き、自然の恵みに感謝があふれ出した。

 その期間中に92歳の母を見送った。面会もままならず、一緒に居られなかった母への申し訳なさ、その後の日々深くなる喪失感は言葉が見つからないが姉兄との語らいや仲間のおかげで今をしっかり生きることが親孝行なのだと思えるようになった。

 一方、女性と子どもを取り巻く環境はまだまだ厳しいように思う。コロナで休職・失業を余儀なくされた人は少なくない。非正規、低賃金で働く割合の多い女性たちが、しわ寄せを受けていることだろう。社会的弱者への視点を欠かせないようにしたい。

 それにしてもコロナウイルス収束とともに社会活動の加速が早い。あの時の時間や家族を大切にする気持ちを忘れず理想と現実の間でいかに自分と周りの幸せを守るかが大事だ。しっかり自分自身を見失わず、仲間を大切に歩んでいきたいものだ。

 この3年間、離れた故郷への思いも募り、今までよりも足を運ぶ機会も増えた。高校生のときにグランドから年中見ていた夕日や共に語り合った友との時間は原風景の一つだ。

 母校の本部町立本部中学校が昨秋75周年を迎え、私は31期、町内の4校統合の時、確か生徒会長だったが、勉強もせず年中自然の中で遊び、部活に明け暮れていた。

 後輩たちには多くの選択肢を意識しながら楽しい時間を過ごしてほしい。情報の波にのまれず現場の風を感じてみよう。そしてたくさん見て触れて、思考することに妥協しないでほしい。教科書やネットにも書いてないことがそこにはあるはず。パイオニアとしての気質をうたう“武本部(ブームトゥブ)”の精神で自由に堂々と先人の思いを追い風に、世界に羽ばたいてほしい! と心からエールを送ります。

 10月から本企画での執筆の機会をいただきとても刺激的な半年で、多くの感想や激励をいただき感謝申し上げます。これまで培った多様な価値観と共に私も新しい旅を始めたいと思う。