「沖縄戦の事実を曲げてはいけない」体験者らが懸念 「集団自決」、小6教科書「軍命」記述なし


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 2024年度から使用するための検定に合格した小6社会科の教科書は、全3社が沖縄戦で起きた住民の「集団自決」(強制集団死)を取り上げた。しかし従来と同様、日本軍の関与を示す記述はなかった。沖縄戦体験者や識者からは「軍命で大切な命が死に追い込まれた」「本質が伝わらない」と指摘する声が上がった。

 本文中で「集団自決」について取り上げた日本文教出版は「アメリカ軍の激しい攻撃に、追いつめられた住民のなかには、『集団自決』した人も多数いました」と記した。東京書籍、教育出版は沖縄戦の写真の説明として、米軍の攻撃で住民が追いつめられたとの記述の後に「集団自決」について触れた。

 「集団自決」の軍命を歴史教科書に明記するよう求め、活動する「9・29県民大会決議を実現させる会」会員の玉寄哲永さん(88)は、教科書の記述に「米軍が上陸したから『集団自決』に追い込まれたと受け取られるのではないか。実際は軍命で大切な命が失われた。沖縄戦の事実を曖昧にしたり、曲げたりしてはいけない」と強く語る。

 1944年の10・10空襲を経験したのは国民学校4年生の頃。「米軍の上陸が始まってからは(糸満の)喜屋武の浜に逃げた。今の子どもたちに同じ経験をさせてはいけない」と力がこもる。

 2021年度検定結果では、高校の「文学国語」の教科書で「日本軍によって『集団死』も強制された」との記述に、検定意見が付かなかったことを挙げ「『強制』の表記は、小中高の他教材でも同様に扱われるべきだ。教科書は子どもたちの大切な教材。沖縄戦の事実・実態をしっかり伝えてほしい」と求めた。
 (吉田早希、古堅一樹)