【識者談話】「集団死の背景…教科書だから書く必要ある」新城俊昭沖大客員教授 教科書・軍命記述なし


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新城 俊昭(沖大客員教授)

 本来、兵士同士が戦う戦争だが、沖縄戦で正規の軍人よりも民間人の犠牲が多かった背景には、何があったのか考える必要がある。当時、日本軍は「軍官民の共生共死」という方針を出した。国のためなら住民が命を投げてもいいという考えで、本来はあってはならない戦術を取った。「集団自決」について軍の関与を書かずに米軍に追い込まれて死んだという教科書の記述では、本質が見えない。

 高校の国語教科書でも日本軍によって集団死が強制されたことが記述された。住民が集団死を選んだ背後にあるのが日本軍の関与だ。教科書だからこそ書く必要がある。

 検定に合格した教科書で沖縄戦のページで4月に米軍が上陸開始と紹介されている。しかし、3月には米軍が慶良間諸島に上陸して地上戦が行われて「集団自決」が起き、住民にたくさんの犠牲が出た。

 教科書の記述には限りがあるだけに、教師の教える力が試される。なぜ起きたのか調べて考える探究心を育てることが大切だ。軍国主義教育の中で指導されて住民が犠牲になり、戦後、民主国家を学んだことが分かる形にしないといけない。問いかけも工夫が必要だ。