壕に隣接した開発区域、審査長期化も 県は文化財と認識 激戦地土砂 沖縄・糸満のシーガーアブ


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糸満市米須の自然壕「シーガーアブ」の開口部=1月(喜瀨守昭撮影)

 糸満市米須の鉱山開発を巡り、県は農地の一時転用申請の審査を始める。ただ県は、開発区域に隣接する自然壕「シーガーアブ」を文化財として認識しており、慎重に精査する方針で、県の審査の長期化も予想される。本紙の取材に対し、開発を計画する沖縄土石工業の永山盛也代表は「全ての手続きを整えてから着工する」と改めて述べた。

 シーガーアブは二つの開口部があり、古くから風葬墓として地域に利用されてきた。沖縄戦では日本兵や住民が利用し、字誌には「7家族くらい入っていた。米軍の呼びかけにも出てこないため、石油を流しこんで燃やした」との証言記録もある。

 県文化財課は2000年に発行した県戦争遺跡詳細分布調査でシーガーアブを掲載。文化財保護法に沿った扱いが望ましいとする。県農政経済課は、工事の影響を精査するため、審査が長期化する可能性があるとする。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんらは採掘前にアブの調査と遺骨収集を求めている。28日に県に改めて提出した要請書で「アブの全容はいまだ調査されておらず、今も戦没者遺骨が残っている可能性が高い」と指摘。搬出入道路は二つの開口部の間を通るため「鉱山掘採やダンプトラックの走行による崩落が危惧される」と訴えている。

 一方、市側は本紙の取材に対し、アブは「開発区域外」にあり、業者が「崩落措置を取る」ことを確認していることから、工事が「アブに与える影響はない」とみて、現段階で調査はしないとの考えを示した。
 (中村万里子)


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