【識者談話】多くの自治体に刺激 安田浩一氏(ジャーナリスト)


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安田 浩一さん

 沖縄県が差別を許容しないという姿勢を見せたことを高く評価したい。2016年にヘイトスピーチ解消法が制定されたものの、条例を制定した自治体はまだ少ない。県の条例制定は多くの自治体に刺激を与える。県の担当者、県議会はもとより、何よりも「反差別」の声を上げ続けた沖縄の人々、市民グループには頭が下がる思いだ。市役所前での小さな抗議活動が、条例制定を後押ししたことは間違いない。

 深刻な「沖縄差別」が存在することは瞭然だ。沖縄の歴史を理解せず、偏見を向ける人々の差別はネットで再生産されている。だからこそ、きちんと沖縄ヘイトと呼ばれるものに目を向ける必要がある。

 包括的に人種や国籍、信条、性別、性的指向などを事由とする差別禁止を盛り込んだことは意義がある。一方、実効性の面で、罰則規定が見送られたことは残念。氏名公表に一定の抑止力はあるかもしれないが、自ら氏名を明かして活動する者には、条例の効果に疑念もある。3年後の見直しに向け、さらに議論を重ねてほしい。

 今、全国各地で深刻なヘイトクライムが相次いでいる。私はそうした「現場」を取材しているが、加害者の多くはネットで影響を受け、暴力に及んだ。ヘイトスピーチのその先にあるのは、理不尽な殺りくである。

 住民の命と安全を守るべき行政が、殺りくの端緒ともなる「差別」に対し、毅然(きぜん)とした態度を見せることはとても重要だ。 (談)
 (ジャーナリスト)


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