<書評>『リメンバリング オキナワ』 感性刺激する楽しさ


社会
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『リメンバリング オキナワ』岡本尚文編著、當間早志監修 トゥーヴァージンズ・1980円

 日ごろ、復帰前に撮影された8ミリ映画や写真を見て暮らしていると、自分の中におもしろい感覚が身に付いていた。

 例えば、1960年代の台湾映画を観た時のこと。以前なら歴史の年表をイメージし「ちょっと昔」みたいな大ざっぱな位置付けをしていたが、最近では「奥武山球場でプロ野球の公式戦が初めて行われたころか…。みんな近所の高台からヌギバイしていたな」なんてことが脳裏をよぎる。生まれる前の他人の記憶が、僕の記憶に滑り込み、鑑賞中の映画の時代を自分も生まれていた日のように、生々しく感じ取れるのだ。

 「過去」の映像と「現代」の風景を比較する作業を楽しんでいたら、「過去」と「現代」の関係を、単に時系列と言う理屈ではなく、距離感とか土地勘のような感覚で受け止める感性が身に付いたようだ。

 本書「リメンバリング オキナワ」は、そんな感性を刺激する楽しさにあふれている。本を開くと左には「過去」に撮影された高精細な写真。右には「現代」の同じ場所の写真が配されている。二つの写真は「過去」「現代」と言う時間で分断されているが、よくよく見比べれば、二つは同じアングルで撮影されている。クイズの「まちがいさがし」の二枚の絵を比べるように、「過去」と「現代」の写真を見つめていると、違う建物のようで同じだったり、道の形、山の稜線(りょうせん)と、類似点を発見してうれしくなる。続いて「この道路が舗装されたのはいつだろう?」とか、自分の知らない時代に積み上げられた、人々の営みに思いをはせる。ページをめくるだけで、僕らの感覚は、時代を超えて広がっていく。歴史は単体の事象ではなく、営みの連続だと、無意識レベルにでも焼き付けられるのではないだろうか。

 正直、全ての学校図書館はこの本を購入するか、歴史の副読本として採用してほしいと真剣に思う。そうすれば沖縄の戦後史教育はもっと豊かになるんじゃないかな。

(真喜屋力・沖縄アーカイブ研究所)


 おかもと・なおぶみ 1962年東京生まれ、写真家。写真集「沖縄02 アメリカの夜」や上間陽子「裸足で逃げる」表紙写真など。「沖縄島建築」が第6回沖縄書店大賞沖縄部門の準大賞。とうま・はやし 1966年那覇市生まれ、映画監督・映画作家。監督作品に「パイナップル・ツアーズ」「琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。」など。