「軍用地主」家族の葛藤を笑いとともに描く 那覇市で舞台「与那覇家の食卓」上演 エーシーオー沖縄の復帰50年企画7作目


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エーシーオー沖縄の復帰50年企画公演の7作目として上演された「与那覇家の食卓」(提供・坂内太さん撮影)

 戦後の島ぐるみ闘争後の軍用地主の一家を描く演劇「与那覇家の食卓」(伊波雅子脚本、藤井ごう演出)が3月24日から29日まで、那覇市安里のひめゆりピースホールで上演された。「軍用地主」を題材に、3世代の家族が繰り広げるそれぞれの思いや葛藤を、笑いを交えて描いた。エーシーオー沖縄の復帰50年企画公演の7作目。

 沖縄の軍用地主一家を書いた伊波の小説「与那覇家の食卓」を藤井の演出で舞台化。2人がタッグを組むのは、名護市辺野古の新基地建設問題を題材にした演劇「クテーラン人びと」以来、2作目となった。

 物語は島ぐるみ闘争で米軍に恐れられた与那覇朝吉の死後、ターウム作りに専念する妻のノブ(知花小百合)と息子・朝憲(花城清長)、妻の勝子(城間やよい)の元に、娘のイズミ(平体まひろ)が東京から恋人の御手洗(前田聖太)を連れて帰る。家族が、残された土地を巡って意見が分かれ対立する。観客は舞台を3カ所から囲む形で鑑賞し、緩急のついた役者の芝居や全3部のドタバタの展開が、物語に引き込んだ。

 28日の回の上演後、伊波と藤井、プロデューサーの下山久が登壇し鼎談(ていだん)した。「一番に伝えたかったこと」を問われた伊波は「復帰から50年がたっても何も変わっていないが、沖縄には、基地があるゆえの特殊事情が山ほどある。与那覇家は3世代の家族の話だが、家族の中でも軍用地の概念もどんどん変わっていく。言い続けなければいけないことや、覚えておかなければいけないことがあった」と語った。

 藤井は「伊波さんの書くせりふや脚本がとにかく面白くて、その面白さがまず伝わること(を意識した)」と話した。「家族が意見を出し合って、最後に(食卓を囲んで)同じものを食べる、そんな家族ドラマだが、家族が言い合っているものの根本には基地の問題、沖縄だからこその問題が浮かび上がる作品だ」と話した。 (田中芳)