「大変さばかり報道。希望者が減る」との声も 教員の働き方、変えるのは誰か <先生の心が折れたとき>第3部(8)連載の反響


「大変さばかり報道。希望者が減る」との声も 教員の働き方、変えるのは誰か <先生の心が折れたとき>第3部(8)連載の反響
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽
教員不足問題を報じる琉球新報紙面

 4月、新年度がスタートした。進級し、希望に満ちた表情で学校に通う子どもたちがいる一方で、必要な教員を確保できず、沖縄県の基準をオーバーする数の子どもを担任することになり、暗い表情の教員もいる。県内外の多くの新聞社が教員不足問題について報じているが、いまだ解決の兆しは見えない。

 琉球新報では1月から「先生の心が折れたとき 教員不足問題」を連載した。第1部では抱えきれない業務量などで精神疾患になった教職員を紹介、第2部では教育行政や制度の課題を検証した。第3部では、県内外の先進事例を取り上げた。

 連載開始後、読者からたくさんの感想や意見が寄せられた。1月末にウェブで回答を募った教職員の働き方などに関するアンケートは、8日間で1571件の回答があった。特に当事者である教職員からの声が多かった。

連載の最初の記事は、教員の1日のスケジュールを円グラフで示しながら多忙さを表した。「私たちがいくら声を上げても変わらない。問題提起してくれてよかった」(57歳女性、小学校教員)という声が目立った。

 保護者からは、教員不足問題について「なんとなく知っていたけど、こんなに深刻化しているとは思わなかった」(40歳女性)など、問題に気づき当事者意識を強めた人がいた。 

社会全体で「当事者意識」を

 教職員からの感想・意見には、「教育に対する、社会や保護者の当事者意識の醸成」(48歳男性、小学校教員)を求めるものも多い。「教員不足や働き方の改善は、教員だけで話し合って解決できるものではない」(33歳女性、小学校教員)という気持ちが強く、学校の問題ではなく社会問題として捉えられることが望まれている。

 保護者からは「親は学校で起きている問題を把握するのは難しい。どんどん取り上げてほしい」(48歳男性)、「この記事が一つ一つつながり、より良い社会に向けて進んでほしい」(39歳女性)などの声があった。

 一方で厳しい意見もある。「教員の魅力を取り上げてほしい」(37歳男性、小学校教員)、「大変さばかりを報道されると教職に就きたいと思う人が減るのは当たり前」(47歳男性、小学校教員)。多くは報道が教員不足に拍車を掛けるという懸念だった。

 同様の意見は教育委関係者からもあった。「これを読んで、なりたいと思う人はいない。しかも連載という形で書かれていて、とても残念」「本当に教員不足を問題と考えているなら魅力を書くべきだ」

 県教委は教職の働く環境改善を急ぎ、4月に働き方改革推進課を新設した。メンタルヘルス対策を担う健康管理班と、働き方改革や業務改善を強化する業務改善推進班で構成。教職員の期待は大きい。

 教職員自ら街頭に立ち、問題を訴える場面もあった。2月、那覇市の県庁前駅周辺にプラカードを持った教員らが集まり「先生が足りない」と訴えた。3月には胡屋十字路でも同様の取り組みがあった。

 教員不足問題は注目を集めたが解決していない。今後の教職員や教育行政の動向が解決の鍵を握る。

(嘉数陽)