「過去にも何度か入荷しにくいことはあったが、ここまでは初めてだ。今回は深刻だ」。那覇市内で営業する沖縄そばの男性店長(42)はため息交じりにつぶやいた。沖縄そばに欠かせない「軟骨ソーキ」。国内の飼養頭数の減少や県外の大手飲食チェーンのメニュー開発などのあおりを受けた品薄の影響が、県内の飲食店を直撃している。
男性店長によると、取引先業者からの仕入れでは間に合わず、他の業者も数件当たったが、ここ1週間「1キロも入ってきていない」現状が続く。先週からいよいよ提供が難しくなり、店内に「日によっては売り切れとさせていただきます」と知らせる張り紙を掲示した。
同店では、1日の販売数の3~4割を軟骨ソーキそばが占める。コロナ禍の自粛が落ち着き、客足が戻ってきている中で、人気商品を安定供給できず痛手となっている。
農林水産省の調査によると、2022年の国内飼養頭数は前年比3・7%(34万1000頭)減の894万9000頭で、減少傾向が続く。軟骨ソーキの入荷量減少は国内の出荷頭数が減っていることが背景にあるが、食肉加工のオキハムの担当者は、原料高騰で、価格の高いロースやバラなど主要部位から、安価な軟骨を求める動きが強まっていることも一因となっているとみる。
「軟骨が着目されて県外でも需要が増えて、今年に入って入手しづらくなっている」。担当者は頭を抱える。
国によって処理方法が違うこともあり、国外産の軟骨はそれほど入ってくることがなかった。国産でも十分に供給が安定していたため、価格帯が上がる輸入に依存する必要もなかったという。
だが、県外での引き合いが強まる一方で、県内ではコロナの影響緩和や観光客の増加で需要は増えている。オキハムの担当者は「国産に限らず、広く仕入れ先を探さないといけない状況になっている」と話した。
(謝花史哲、當山幸都)