沖縄ロック界のレジェンド「かっちゃん」こと川満勝弘さん(78)が20日、死去した。いま、再び、かっちゃんのさまざまな「伝説」を思い起こしている人も多いだろう。琉球新報の過去の記事、そして数々の写真から、あらためて今「かっちゃん」に迫る。
【2012年掲載】コザロックの象徴、閉店 ライブハウス・ジャックナスティー カッチャン「次のステップに」
【沖縄】ロックの街・沖縄市コザを代表する歌手「カッチャン」こと川満勝弘さん(67)が沖縄市のゲート通りで経営し、活動拠点にしてきたライブハウス「ジャックナスティー」が30年の歴史に幕を閉じた。基地の門前町で屈強な米兵や血気盛んな若者を相手に、卓越した演奏と過激な演出を披露し、一世を風靡(ふうび)した「コンディション・グリーン」(1971年結成)の元ボーカルとして知られるカッチャン。コザロックの象徴とも言えるライブハウスは区切りを付けたが、「おつりが来るくらいやったし、悔いはない。ロック魂は永遠に骨まで染み込んでいる。場所は関係ない。次のステップに行くよー」とロック道を歩み続けるつもりだ。
2月26日夜、同ライブハウスのラストライブがあった。親しいミュージシャンに囲まれ、ステージに立ったカッチャンは普段通りユーモラスな言葉を発し、客席を沸かせた。ルイ・アームストロングの「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」、オーティス・レディングの「The Dock of The Bay(船着き場に腰掛けて)」など、ゆったりと流れる時間や自然の美しさを描いた曲を、客席から奪ったたばこをくゆらせ満面の笑みで歌った。
かつては米兵客たちとぶつかり合うかのように、ヘビを振り回すなどの過激な演出で、激しい曲を演奏した。しかしこの10年で「穏やかな曲が好きになった」。
「世界は矛盾だらけで難しい。でも敵討ちはきりがない。戦争で人を殺していても、人種や言葉が違っても、突っ張らずに五感に働き掛ける。『身近な状況を感じろ』と。そうすれば何かが伝わる」。ステージでそう思うようになった。
1ドル300円台の時代は1カ月で家が建つほど稼いだが、円高や若者が好む音楽の多様化で、コザのライブハウスを取り巻く状況は変化している。だが「高い山を登れば今度は下るだけ。そしてその繰り返し。沖縄の波と同じ」。ロックをやめるつもりは毛頭ない。
ロック人生の大半を過ごしたこのライブハウスには物語が詰まる。音や声が届かないはずの聴覚障がい者の若者たちを奮い立たせたこともあった。72年に東京中野サンプラザで開いたデビューコンサートで、両親から奪ってステージで抱きかかえた男の赤ちゃんが成人し、訪ねてきたこともあった。「これからも五感に響くライブを続けるよ」。ステージを終えたカッチャンの額に、変わらず汗が輝いた。
(島袋良太)(2012年掲載)
「最後のコンサート」でも「「最後ではないです。これからもマイペースに」