自衛隊PAC3展開、無届けで港湾使用 沖縄・与那国の祖納港 空港では時間外も


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航空自衛隊のC2輸送機で運び込まれた自衛隊車両=25日午後8時20分ごろ、与那国空港

 北朝鮮の軍事偵察衛星発射に備え、防衛省・自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の先島諸島への展開を進めている件で25日、装備品の輸送に伴う無届けの港湾使用や空港の運用時間外使用が相次いだ。

 与那国町の祖納港では同日午前6時ごろから7時ごろにかけて、自衛隊から輸送を委託された民間事業者の船が車両を陸揚げした。祖納港を管理する県によると、輸送した民間事業者は県港湾管理条例に基づく岸壁使用許可申請を出しておらず、県が経緯を調べている。

 県港湾課によると、本来ならば船を実際に運航する事業者が、事前に八重山土木事務所に届けを出す必要があった。自衛隊は取材に対し「事業者に聞いてほしい」と回答した。

 関係者によると、24日に中城湾港や那覇港に入ろうとした海上自衛隊の輸送艦「しもきた」は計画を断念。代わりに「はくおう」が九州からPAC3関連の車両を積んで石垣、宮古に直接入る計画を立てている。

 航空輸送でも混乱が続いた。複数の関係者によると、自衛隊側は24日、25日午前1時ごろに新石垣空港を使用したいと打診したが、管理する県側は同空港の運用時間(午前8時~午後9時)外であることを理由に断った。

 県関係者は「航空機の管制のほか、空港管理にも人を要する」と話した。与那国空港には、運用時間外の25日午後8時ごろ、C2輸送機が飛来した。

 宮古空港について、自衛隊が24日、25日午前8時台と午後2時台の使用を届け出たが、混雑で駐機スポットがないため取り下げ、改めて届けを出して25日午後6時過ぎに着いた。宮古島への輸送は22日に破壊措置準備命令が出た後、初めて。

 政府関係者は「県民の命を守るための急を要する展開だ」として県の迅速な対応を求めた。沖縄防衛局の担当者らは県庁を訪ね、空港の使用が円滑に進むよう協力を求めた。

 県幹部は「深夜の使用はさすがに難しい。ケースバイケースで判断することになる」と話した。(沖田有吾まとめ)