ネットで広がる「沖縄ヘイト」に警告 名誉毀損訴訟で勝訴した辛淑玉さんが会見 「勝たなければいけなかった」


この記事を書いた人 琉球新報社
「ニュース女子」を巡る名誉毀損訴訟での勝訴を受け会見する辛淑玉さん(左から2人目)=1日、東京・霞が関の司法記者クラブ

 【東京】沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた番組「ニュース女子」で、ヘイトスピーチ反対団体の辛淑玉(シン・スゴ)共同代表の名誉を傷つけたとして、制作会社「旧DHCテレビジョン(現・虎ノ門テレビ)」に550万円の支払いと謝罪文のネット掲載を命じた一、二審判決が確定したことを受け、辛共同代表が1日、東京の司法記者クラブで会見した。辛さんは「勝たなければいけない裁判。負けてはいけない裁判だった」と6年にわたる戦いを振り返った。

 2017年1月に地上波の東京MXテレビで番組が放送されてから続いた中傷被害を、辛さんは「きつかったというレベルではない」と吐露した。それでも「犬のようにひれ伏しているより、震えながらでも立っていきたいと思った」とし、反攻に向かう気力を振り絞った当時の心境を明かした。

 番組が放送されてからインターネットを通じてデマや中傷が広がった。面識のない人から罵倒されることもあったといい、「大衆が敵になる経験は言葉にできない」と唇をかんだ。会見では、影響力のある地上波での番組放送が被害を拡大させた点も強調した。

 記者団からは、ネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)さんのツイッター投稿や、テレビ朝日出資のネットテレビ番組「ABEMA prime(アベマプライム)」での沖縄の基地問題についての発言をきっかけに、「沖縄ヘイト」のような言説が広がったことへの質問も上がった。

 辛さんは「沖縄や辺野古に対して何をしてもいいという社会的認知が確定したのだと思う」と指摘。「今この社会を覆っているのは差別ビジネスだ。あらゆる者が差別をし、誰かを犯人扱いして、デマを流してそれでお金をもうけるという仕組みがインターネットの中でやっぱり確立したんだと思う」と警鐘を鳴らした。
 (安里洋輔)