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日中は故郷「戦争だめ」 県内在住、中国出身者、嫌悪、差別に不安募る<東アジアの沖縄・第1部「有事」への眼>4


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「戦争は絶対だめ」と話す日本沖縄華僑華人総会の東江芝軍会長=3月、那覇市古島

 「台湾有事」を巡って日中関係が悪化する中、沖縄で結婚し、日本国籍を取得した中国出身者らは苦悩を深めている。

 那覇市古島の事務所には、壁一面にこれまでに開かれたカラオケ大会や文化交流などの写真が貼られている。沖縄と中国の架け橋を目指し、活動する日本沖縄華僑華人総会の東江芝軍会長(58)は「もし日本と中国が戦争したら私は両方が故郷だから一番苦しい。絶対だめよ、戦争したら」と力を込める。

「沖縄の人の温かさに励まされてきた」と話す山内明恵さん=3月、那覇市牧志

 東江さんは南寧市出身。貿易の公営企業に勤めていた26歳の時、日本語の勉強で沖縄に来た。「小さな島」という認識は沖縄の人々の温かさに触れ、次第に変わった。「アルバイト先の弁当屋で、残った弁当を『持って帰って』と言ってくれたり、タクシーに乗れば『留学生?すごいね』とまけてくれたり『中国と沖縄は関係が深いんだよ』って教えてくれた。小さいけれど温かい。沖縄が大好きになった」

 当初、半年で帰国予定だったが、琉球大の教育学部で2年間勉強。仕事を辞め、沖縄の人と結婚し日本国籍を取得した。「模合」で沖縄の人たちの温かさに隠された沖縄戦の苦しみにも触れた。息子は台湾人の女性と3月に結婚。「もっと肩の荷が重くなった」と苦笑しつつも前を向く。「日本も中国も両方大事、両方が故郷。もし本当に何かあれば、真ん中に立って、国旗を持ってそれぞれに『ストップしてください!やらないで!』と止めたい」

 30年以上、沖縄に住む福建省出身の山内明恵さん(57)も「沖縄は中国より大事。もし本当に国と国の戦争になるような時には民間の力が必要。私たちは中国に訴えることができる立場だと思う」と話す。

 山内さんは留学で1990年に沖縄に来て、沖縄で結婚。現在は牧志でパワーストーンの店を営む。クルーズ船などで中国観光客の案内もしてきた。しかし今、初めてという中国人嫌悪や差別に懸念を強める。先日、自宅マンションで身に覚えのないことを責め立てられ、警察にも相談した。「まさか沖縄でこんなことが起きるなんて。もっと日中関係が悪化したら…。店を持っている人が一番狙われやすい。いくら日本国籍を取得しても中国人。戦争も怖いけれど人種差別が一番心配」

 沖縄を「第二の故郷か故郷以上」と言い切る東江さんと山内さん。国の対立が影を落とし始める今、何よりも日本と中国の両国の関係改善を願っている。

(中村万里子)