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―2016年の先進7カ国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)は三重県にどんな恩恵をもたらしたか。
「地元の魅力を発信する素晴らしい機会になった。経済効果は新聞やテレビ、雑誌、インターネットによるPR効果を広告費やCM料金に換算する間接的な『パブリシティー効果』が3098億円。19年には観光消費額と入り込み客数が過去最高を記録した。海外で認知度が上がり、開催地として一つのブランドを作ることができた。市民、県民が力を合わせて大きな国際会議を開催できたという『誇り』を醸成する機会になったのではないか」
―開催の悪影響は。経済効果が県全域に行き渡らないという批判もあったが。
「大きな不利益があったという話はなく、期間中の交通規制や真珠の養殖業者の作業への影響ぐらいではないか。知事時代に繰り返していたのは、サミットはチャンスでしかなく、それをつかむかつかまないかは自分たち次第だということ。三重で『国際会議を増やそう』と訴え、16から19年で20程度の国際会議の開催を目標に掲げ、54の誘致を実現した」
―開催費用の総額や、それに対する費用対効果は。
「県のサミット関連予算に94億円の事業費を盛り込み、そのうち県の負担は49億円だった。借金となる県債の多くは道路などのインフラ整備に使われ、自治体の積立金である財政調整基金はWi―Fi(ワイファイ)の整備や携帯電話の不通話区間の解消などに活用し、開催後の資産になった。観光の底上げなどと合わせて、費用対効果として県民に理解してもらえる部分も多いと思う」
「民間でもさまざまな業界団体が国内外への出荷額の増加など成果につなげ、チャンスを生かすことができている。県産食材の知名度が上昇し、県産のアオサや日本酒の出荷も伸びた」
―開催県にはどんな取り組みが求められるか。
「開催地付近の行政だけでなく、地域の人たちや経済団体も含め、全県が一体感を持って参加できる機会が大事ではないか。三重では、国内外から訪れる関係者を迎えるため、全ての市町で県民参加の『クリーンアップ作戦』や『花いっぱい作戦』などを行った」
「三重は伊勢志摩サミットの経験を生かし、今回は交通相会合の開催地に選ばれた。開催地の志摩市は三月に中日新聞社など地元の企業や団体と地域活性化の協定を締結し、さらなる知名度の向上や観光振興への新たな一歩を踏み出した」
―一過性で終わらせないために大切なことは。
「忘れてはいけないのが将来を担う子どもたちの関わりだ。サミット開催時は県内の小中学校で参加国の料理を味わってもらう『サミット給食』を実施したほか、外務省職員に来てもらって、国際文化を学ぶ授業も行った。海外留学や海外研修に参加した県内の高校生は、サミット前の15年度に350人だったが、16年度は457人、17年度は476人に増え、国際理解が着実に深まっている。次世代を巻き込む事業は未来につながっていく」
(聞き手 東京・中日新聞 佐藤裕介)
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すずき・えいけい 1974年、兵庫県生まれ。東大卒。98年に通商産業省(現経済産業省)入省。2011年4月に当時、36歳で全国最年少知事として三重県知事に初当選。2期目にサミットを誘致。知事を3期務め、21年10月から自民党衆院議員。22年8月に内閣府政務官。
伊勢志摩サミット 米大統領が被爆地訪問
2016年5月26~27日に三重県の志摩市などで開かれた。
サミットには当時の安倍晋三首相、オバマ米大統領、英国のキャメロン首相、フランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相、イタリアのレンツィ首相、カナダのトルドー首相が出席。欧州連合(EU)のトゥスクEU大統領やユンケル欧州委員長も招かれた。
サミットでは、原油安などで世界経済に先行き不透明感が漂う中、先進7カ国(G7)が財政、金融、構造改革の三つの政策を進める「三本の矢のアプローチの重要な役割を再確認する」などとした「伊勢志摩経済イニシアチブ」を首脳宣言に盛り込んだ。
首脳らは公式行事の一つとして伊勢市の伊勢神宮を訪れ、境内で三重県木に指定されている「神宮スギ」を小学生らと記念植樹。政教分離の原則を踏まえ、首脳らは参拝ではなく、訪問の形式をとった。
オバマ氏はサミット後、現職米大統領として初めて被爆地の広島を訪問。平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花し、被爆者らと言葉を交わした。原爆投下の謝罪はなかったが、演説で核廃絶への決意を訴えた。