被爆地で核の現実感じ議論を 湯崎英彦広島県知事 <サミットを聞く 国内開催地から④>


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―被爆地の広島である先進7カ国首脳会議(G7サミット)への期待は。

 ロシアがウクライナに侵攻し、台湾を巡る米中の緊張も高まっている。ロシアによる核兵器使用の脅しもある中で、平和の回復とその維持が大きなテーマになる。サミットが広島で開かれることは非常に重要で、議論のテーマと開催場所の持つメッセージが一致しているのはかつてないこと。G7の首脳が発する平和のメッセージが相乗効果を生み、世界にインパクトを与えることを期待したい。

―原爆資料館(広島市中区)を各国首脳が視察し、被爆者と対話するよう政府に要望している。

 原爆資料館の展示や被爆者の証言で核兵器が使用された時に現実として何が起きるかを示すことができる。頭の中の知識ではなく、意味を心で感じられる。それを踏まえて議論してもらうことが重要だ。

―サミットに絡め、広島の魅力発信をどう進めるか。

 各国のメディア向けのツアーを既に始めた。サミット会期中はメディアセンターで広島の食べ物や飲み物をアピールし、伝統文化や産品、自然環境も含めて紹介できるようにしたい。

―2016年に三重県であった伊勢志摩サミットでは、県内への直接的な経済効果だけで483億円あったとされている。広島サミットの経済効果は。

 伊勢志摩サミット並みのものはあると思っているが、終わってみないと分からない。波及効果はより大きくなることを期待している。宮島(廿日市市)の3月の観光客数は過去の同月比で最多になった。サミットの事前効果が既に出ている可能性もある。

―広島県や県警はサミット会期と前後を含めた5日間、市中心部などの交通総量を半減する目標を掲げた。これに伴って学校の休校や企業の休業が相次いでいる。

 これだけの要人がそろう中、セキュリティー確保のために不便が生じるのは避けようがない。特に交通は機能を維持するために全体量を減らす必要がある。理解をいただく努力はしなければいけない。

―県としての費用負担は。

 県の関連予算は累計114億円になる。うち国の補助は36億円。道路補修や医療体制の整備などインフラ整備だけで80億円かかっており、思ったより負担が大きい。一方で経済効果は直接効果だけではない。大きな会議の実績は今後の会議の誘致にもつながる。長期的に見て十分なリターンを得られると思う。

―県費の支出を伴う以上、県民の理解が何より大切になるが。

 直接影響を受ける主会場周辺の住民からは幸い基本的な理解をいただいている。企業の自主的なPRや応援の取り組みも1900件に達した。サミット後を含めて子どもの教育面やビジネス面など間接的にプラスになることは多い。そういった点も含めて理解を得られるよう努めたい。

 (聞き手 中国新聞・永山啓一)
 (おわり)


 ゆざき・ひでひこ 1965年、広島県生まれ。東京大卒。通商産業省(現経済産業省)を経て、2000年にブロードバンド通信会社を設立し、副社長を務めた。09年11月に広島県知事選に初当選し、4期目。米スタンフォード大で経営学修士取得。