石を牛に見立て散歩させた幼少期 いざ夢の「春の全島闘牛」へ チャンピオンに初挑戦 うるま・山城長順さん


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愛牛のちょこっとパンダ☆角金と軽量級チャンピオンに初めて挑む山城長順さん=4月29日、うるま市内の牛舎

 【うるま】「闘牛のまち」うるま市の石川山城で生まれ、闘牛を飼育して約35年の山城長順さん(65)にとって、「全島一」の闘牛を育てることは、幼少時からの夢だった。小学生の時には手頃なサイズの石を拾ってきて綱を通し、牛に見立てて友達と牛オーラセーならぬ石オーラセーで遊んだ。「せーの」の合図でぶつけ合い、石が粉砕した方が負け。シンプルなルールながら当時の同級生は毎日熱中していた。「強い石は本物の牛みたいにかわいがっていたね。石を散歩させて歩いていたさー。遊んだ後は木に縛り付けて草をあげてから帰宅してたんだよ」と笑いながら話す。

 そんな山城さんがウシカラヤー(牛飼い)人生で初の大勝負を迎える。14日に開催される「春の全島闘牛大会」に愛牛の「ちょこっとパンダ☆角金(ちんがにー)」が軽量級のチャレンジャーとして出場を決めた。

 徳之島で2連勝後に1敗を喫し、その後は稽古でも闘争心が感じられず、闘牛としての見切りをつけられ、肉牛として出荷するため沖縄に送られたちょこっとパンダ。だが子牛の頃に世話した知人に「あの牛は絶対復活して強くなる」と勧められ、購入を決めた。

 山城さんは毎日愛情をかけて牛を育てた。イケイケな性格もあって、対戦相手は常に格上を選んだ。周囲から反対されながらも「勝負事は何でもやってみないと分からん」と、どんな相手のオファーも断わらなかった。下馬評を覆し、5連勝と破竹の勢いではい上がり、ついにタイトル戦の権利を手にした。

 現チャンピオンの常勝会テスリ華梨は30戦のキャリアを誇る大ベテラン牛で、もちろん強敵だ。それでも山城さんは「山城集落でチャンピオンが出たことは1回もない。僕が初めて全島一を取りたいさ」と少年のような笑顔で話した。憧れ続けた全島一を目指し、愛牛と共に戦いに挑む。
 (伊波大志通信員)