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いつも心にある、沖縄の「未来図」描く 国交省航空局次長・新垣慶太さん<県人ネットワーク>


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新垣 慶太さん

 「道路ができて街並みが変わって。帰る度に見える景色が変わるんです」。県外に出てからもう40年以上。1人のウチナーンチュとして、毎年、帰郷する度に変わっていく地元「ヤンバル」の風景を目にして時の流れを実感する。一方、社会資本の整備に携わる行政マンとしては、少し違った見え方もしている。

 「2年、3年先、世の中はこういう情勢になっているだろうと予測しながら街の姿を思い描く」

 2022年7月から国交省航空局次長を務める。政府系金融機関の日本政策投資銀行への出向を経て2年ぶりに古巣に戻ってきた。中長期での経営計画の立案が可能な民間での経験を経て、会計年度ごとに予算を編成する「単年度会計主義」が原則となる「公」の仕事の難しさと醍醐味(だいごみ)を再び感じている。

 「年度ごとの限られた国家予算の中で、数年先を予測した、その場しのぎではない、地に足の着いた編成をしなければならない」。財政当局との交渉も重要な職務だが、「国民世論の理解を得ることが最も重要。政策を進める一番の鍵です」と力を込める。

 16年6月から18年4月までは海上保安庁で総務部主計管理官を務めた。

 尖閣諸島周辺海域への中国公船の領海侵入が相次ぐ中、政府は16年12月に海保の体制を抜本的に見直す「海上保安体制強化に関する方針」を閣議決定。領海警備体制の大転換の節目に立ち会い、国の行く末を左右する仕事を前に「未来を見通す視座」が必要だと改めて気づいた。

 尖閣諸島は、沖縄県に属する国境離島だ。そのことを意識することはあったか問うと「そうですね」と言葉を選びながら「沖縄のことはもちろん意識しました。でも、それ以上に領海警備は海上保安庁では『一丁目一番地』と呼べるほどに重要な職務。現場の対応力の限界も知った。限られたリソースをどう運用するか、海保に課された大きな課題でした」と付け加えた。

 運輸省運輸政策局観光部(現在の観光庁)で観光政策の立案に関わった時にも、「観光立県」である古里のことがよぎった。「沖縄の観光はどう変わっていくだろう。沖縄ならどうできるだろう。そんなことを想像しながら政策を考えていましたね」。そういって笑う視線の先に、いつも心にある沖縄の「未来図」が広がっている。
 (安里洋輔)


 あらかき・けいた 1967年4月生まれ、名護市出身。名護市立名護小、私立愛光中・高校を経て東京大学法学部卒。91年4月、運輸省(現・国土交通省)入省。国交省海事局内航課長、同海上保安庁総務部主計管理官、同政務課長などを経て現職。