「離農も続けるのも、苦しい」 子牛価格下落で沖縄の繁殖農家 何重もの苦しさとは


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子牛に粗飼料を与える沖縄市の繁殖農家の仲泊旦輝さん=22日、沖縄市

総額150億円規模の県内の子牛繁殖業が、取引価格の下落で揺れている。2021年の繁殖農家は2207戸で、家族経営も多い産業だが、飼料価格や燃料費の値上がりと物価高などが経営を直撃。こうした中での子牛価格の下落に「苦しさが何重にもなって先行きが見通せない」「離農するのも、続けるのも、どちらも苦しい」など悲痛な声が上がっている。

17日の糸満市の南部家畜市場での競り市場。子牛の鳴き声と競りの進行役の声が響いたが、取引価格は低調で、繁殖農家のため息が漏れた。同市場の野原実場長は「この価格では赤字の繁殖農家も多いはずだ。繁殖農家の顔を見ていられない」と声を落とした。

子牛価格が下落する中、成牛が出品される事例も。成牛は母牛として繁殖の要となるが、赤字経営で規模の縮小や収入の足しにするために母牛の出品を余儀なくされている農家も少なくない。

南部地区で繁殖農家を営む男性は子牛に粗飼料を与えながら「1年ほど前から自治体やJAに規模の大きい援助を要請していたが相手にされなかった。今から検討するのでは間に合わない」と怒りをにじませた。

県は配合飼料の高騰分の援助や、国の子牛価格が下がった時の補填(ほてん)制度で対応しているが、価格は変動することもあり、その都度支援策を講じる難しさもあるという。

多くの繁殖農家は設備の導入、維持などのため借り入れで資金を調達している。価格が上がる保証がない中、いつ廃業の決断をすべきかと頭を抱える農家も多いという。

沖縄市の山間地に建つ牛舎で取材に答えた繁殖農家の仲泊元輝さん(49)は「苦しいのは皆同じだけどね」としつつ、「現場とJAの本部の間で意思疎通ができていないと感じる。現場の指導員や農家の話を聞いてほしい」と切実に訴えた。
(福田修平)