大国の対立激化で「対話しづらく」 沖縄、韓国、中国の行政幹部らが議論 済州フォーラム


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(左から)照屋義実副知事、照屋義実副知事、巴特爾常務委員兼秘書長

 訪韓中の照屋義実副知事は2日、韓国の済州特別自治道などが主催する「済州フォーラム」の「持続可能な平和と繁栄のための地域外交」と題したセッションで講演した。県の平和行政や観光、経済、国際交流の歴史を紹介しながら「21世紀の万国津梁(しんりょう)を構築する」と地域外交に取り組む決意を語った。

 同じセッションでは済州の呉怜勲(オヨンフン)知事や中国海南省の巴特爾常務委員兼秘書長が登壇。沖縄と同じく周りを海に囲まれた地域として独自外交を展開する重要性を訴えた。

 フォーラムは平和の実現や国際課題の解決策を探ることを目的に開催。韓国内外のさまざまな分野のリーダーや専門家らが参加した。識者らによるパネル討論では、国家間の外交では大国同士の対立激化で話し合いがしにくい環境になっているとして、地域間の外交で対話を継続する重要性が提起された。(知念征尚)


経済交流 地域に安定 照屋義実氏(沖縄県副知事)

 第2次世界大戦で沖縄では住民を巻き込んだ過酷な地上戦が行われた。県民は地上戦での凄惨(せいさん)な体験を通し、命の尊さと平和の大切さを感じ、世界の恒久平和の実現を求め続けている。

 主要産業は観光業だ。海外の人々と交流することが異文化理解を進め、平和につながるという考えがある。経済的なつながりは相互発展や交流を促進し、地域の安定をもたらす。観光を支えているのが独自の自然、伝統文化、芸能などのソフトパワーだ。

 ソフトパワーなどを活用し、アジア・太平洋地域の平和構築と持続的な発展に貢献したいと、地域外交室を設置した。沖縄は王国時代から「万国津梁(しんりょう)」、架け橋となることを目指してきた。平和貢献の地域協力外交の展開や交流ネットワークの形成などにより、21世紀の「万国津梁」を構築していく。


国家を越えて課題解決 呉怜勲氏(済州特別自治道知事)

 気候変動と自然災害、新たな感染症など世界的な複合危機に対して人類が力を合わせて解決を目指さないといけないが、覇権国家は競争に走り、グローバル協力はまともに行われていない。

 伝統的な国家だけでこの問題を解決できるのか疑問だ。国の限界を乗り越え、柔軟かつ弾力的に交流を導く地域外交が人類の課題を解決できる。

 済州特別自治道はフォーラムを活用して地方外交をより強化している。中国、日本、アジアの主要都市を招き、知恵を分かち合い、討論の場をつくっている。来年の沖縄の観光フォーラムにも参加予定だ。

 沖縄、海南省、済州が周辺都市との連帯をリードし、新たな地域外交を創出している。伝統的な国家外交だけに任せてはいけない。

 地方政府が乗り出さなければならない。


協同発展へ良い隣国に 巴特爾氏(中国海南省常務委員兼秘書長)

 済州と沖縄、海南は地方外交においてとても重要な、先駆的な街だ。海南は自由貿易港を建設している。開放政策を誠実に実行し発展してきた。多国籍企業が立地し投資先となっている。

 地方外交は多様な形で協力できる。域内の持続的な平和のために重要な役割が担える。喜んで貢献したい。われわれは三つのメリットを持っている。中国本土と東南アジアという市場をつなぐ地理的優位性。低い税率、便利な物流など政策優位。自然環境に恵まれ、生態系の優位性がある。

 各国の状況を尊重し、事例を学び共有したい。低炭素化などの分野で多大な協力が行われることを望む。相互交流を強化し協同発展を追求する良い隣国となりたい。中国には「友達も往来すればするほど仲良くなる」という言葉がある。ぜひ海南に来てほしい。