沖縄の近海に金や銅、6つの「熱水鉱床」 調査から10年 有望視も商業化は遠く、その理由は


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 県が2013年度に沖縄近海の深海底にある金や銅、鉛などの金属が堆積した「海底熱水鉱床」の開発、利用の可能性調査事業を開始してから10年がたった。国は沖縄周辺に有望な鉱床(サイト)が六つあり、そのうち「伊是名Hakurei」には740万トンの資源が眠ると公表。県はこの10年、商業開発の開始時に向け後方支援拠点の形成を検討してきた。だが現時点では経済性や法整備など課題が山積し、商業開発のめどは立っていない。県は将来的な開発に向けて本年度も情報収集を継続する。

 政府は08年に第1期海洋基本計画を決定し、海底に眠る熱水鉱床とメタンハイドレートの商業開発を10年程度で実現する目標を掲げたが、いずれも実現していない。県はこの方針を受け、13年度から海底資源に関する調査事業を開始し、22年度までに約1億3700万円の予算を費やしてきた。

 国は17年に沖縄近海の深海約1600メートルの熱水鉱床から金などの資源を含む鉱石約16トンを引き揚げる試験に世界で初めて成功した。商業化の期待が高まったが、鉱石の引き揚げに経費がかかりすぎてしまい経済性に疑問符がつく結果となった。

 県調査でも法整備や経済性、住民理解の面で課題がある。海底の鉱物資源に関する鉱業権を定める手続きの実績がないことや、海底開発に伴う環境影響評価の法整備がなく、評価方法も確立していないとの課題が挙げられる。民間企業から収益面を不安視する声もあった。県産業政策課は「すぐに商業化の動きがある訳ではないが、状況の変化に対応できるように本年度も調査事業で情報収集を続ける」と述べた。

 一方、県が聞き取りした県内の環境・建設コンサルタントからは「沖縄の経済全体を活性化する一大プロジェクト」と期待の声が上がるほか、研究機関からは「県自身で、沖縄県近海の海洋資源に関する調査を行うことも可能」との声もあり今も期待は高い。県に調査船が寄港する拠点港や採掘した鉱物の保管・分析を担う拠点の整備を要望する声も多い。県幹部は「現時点では商業化は難しいだろうが、沖縄近海に海底資源があるということ自体が沖縄の潜在力を示す一つの要素となる」と指摘した。
 (梅田正覚)