【識者談話】沖縄の「海底熱水鉱床」 人材育成、研究の継続を 山崎哲生(大阪公立大学客員研究員)


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山崎 哲生(大阪公立大学客員研究員)

 沖縄近海にある「海底熱水鉱床」の調査開始から10年がたった。貴重な資源として有望視される一方、商業化へは課題が山積している。今後の方向性について識者に聞いた。

 海底熱水鉱床の商業化が実現しないのは当初見込みよりも、金属含有率が低いことが分かってきたからだ。海底から鉱石を掘り出して船へ揚げ、金属を取り出すといった工程にかかる経費が想定より大きかったことも、もう一つの理由である。

 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2013年に「Hakureiサイト」を公表して以来、沖縄近海で有望な鉱床を調査してきた。だが、詳細なボーリング調査をすればするほど当初見込んだ金属含有率よりも低くなっていった。JOGMECが今最も調査に力を入れているのが「ごんどうサイト」で、今夏に詳しい調査報告書が公表される。

 今、世界で海底熱水鉱床の開発を熱心に取り組んでいるのは日本くらいだ。カナダのノーチラス社はパプアニューギニアで沖縄近海よりも有望な海底熱水鉱床の開発を目指したが、資金繰りに行き詰まり、2019年までに計画は頓挫した。

 短期的には難しくても、将来的にはますます円安が続き、資源を海外調達するよりも国内調達した方が有利となる日が来る可能性がある。その時に備え、国内の技術力維持や人材育成のために、一つでいいので鉱床の操業を始めることが絶対に必要だ。

 私は採掘した鉱石の選別を陸上でやるのではなく、比重差を利用して海底で行う技術のほか、大量の水を使ってパイプで鉱石をくみ上げる従来の手法ではなくて、網カゴに入れて引き上げる技術の開発でコスト削減をすることも提唱している。

 沖縄県はもともと海底熱水鉱床の商業化により、精錬所の誘致を目指していたがコスト面で難しいだろう。しかし船の乗組員や食料の調達拠点は近いところに絶対に必要で、沖縄はその点で貢献できる。
 (海底資源開発)