沖縄・九州経済、先行し回復 訪日客、半導体関連投資がけん引 バスケW杯「追い風」も、課題は人手不足


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混雑する福岡空港の国際線ターミナル=2日

 九州・沖縄の景気浮揚が鮮明となっている。日銀福岡支店は「回復しつつある」と現状を判断。新型コロナウイルス禍後、他8地域に先駆け「回復」の表現を復活させた。けん引役はインバウンド(訪日客)急増と半導体関連投資だ。ただ、全国的な課題でもある労働力不足が影を落とす。

 中でも沖縄は回復の動きが先行している。インバウンドはコロナ禍前への復調の途上にあるが、県外からの観光客を取り込み、県内消費も堅調に推移したことで、日銀那覇支店は4月の判断で「持ち直している」から「回復している」に引き上げ、5月も維持した。 「久しぶりの海外旅行なので、張り切ってお土産を買ってくれる」。めんたいこ製造販売のやまやコミュニケーションズ(福岡県篠栗町)の山本正秀社長は、韓国人客を中心とした旺盛な消費意欲に顔をほころばせる。福岡空港国際線での売り上げは5月、コロナ前の2019年同月の約1.3倍になった。

 九州の23年4月の訪日客数は19年同月比で73.5%。アジア各国から近い立地が後押しし、全国(66.6%)を上回るペースで持ち直している。

 福岡市のホテルは「円安でお得感が出た分、滞在日数も伸びている。客室単価は過去最高の水準だ」と説明する。

 今月5日には中国本土と福岡空港を結ぶ路線が約3年3カ月ぶりに再開した。福岡で7月に水泳、沖縄では8~9月にバスケットボールの世界大会が開かれ、観光業者は「追い風だ」と喜ぶ。

 半導体関連は、熊本県菊陽町に工場を建設中の半導体世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が投資を呼び寄せる。22~24年の設備投資額は九州全体で計1兆5千億円を超える。相次ぐ企業進出と生産能力増強は、従業員の増加に伴う住宅投資や個人消費の活性化など波及効果が大きい。

 熊本県の蒲島郁夫知事は「TSMC進出は100年に一度のビッグチャンスだ」と鼻息が荒い。九州が世界の半導体生産量の1割程度を占めた1980年代の「シリコンアイランド九州」の復活を目指す声が産業界で高まっている。

 日銀福岡支店の浜田秀夫支店長は九州・沖縄の景気に関し「訪日客を含め、観光が個人消費を潤している」と分析する。

 一方で供給面の制約は強い。帝国データバンクの4月調査で、九州・沖縄の飲食、宿泊業ともに「人手不足」と答えた企業は100%(非正社員)に達した。ある宿泊施設の担当者は「調理スタッフが特に奪い合いだ。人が足りず、平日のディナービュッフェを休止している」と嘆いた。
(共同通信)