呼び掛けは71歳の新入生、八商工定時制1年が沖縄戦を題材に朗読劇 平和を考えながら一歩踏み出す


この記事を書いた人 琉球新報社
朗読劇を披露する八重山商工高定時制の1年生ら=15日、石垣市の伊原間中学校

 【石垣】八重山商工高校定時制の1年生が15、21の両日、石垣市内で平和朗読劇に取り組んだ。京都府出身で71歳の新1年生、吉田宇留(うる)さんを中心に、不登校などつらい経験をした生徒も共に4月から練習を重ねてきた。

 題材は沖縄戦時の米陸軍の通訳兵で、住民にうちなーぐちで投降を呼びかけ、多くの命を救った故比嘉武二郎さん。定時制教頭の功刀(くぬぎ)弘之さんがかつて県平和祈念資料館に出向していた際、比嘉さんから直接聞いた言葉を基に台本を作った。

 朗読劇をやるきっかけとなった吉田さんは大学卒業後、舞台監督など演劇関係の仕事を続けてきた。100回近く訪れるほど石垣島が好きで、島の子どもたちに演劇を教えたいと2020年に石垣に移住した。商工に定時制があることを知り「駄目元で」受験し合格した。

 短期間のため演劇ではなく朗読劇に挑戦することにした。アルバイトなどもあり、練習に全員がそろうことは難しかったが、それぞれができることを少しずつ積み重ねた。

 15日に石垣市立伊原間中学校で初めて朗読劇を披露した。中学生は真剣に耳を傾けた。堂々とやりきった東風平竜悟さん(16)は「最初はめんどくさいと思ったけど、やらないよりやって後悔した方がいいと思った。恥ずかしさを捨てて練習の時の自分を超えられた。成長できた。やってよかった」と充実した表情を浮かべた。

 21日は商工の視聴覚室で定時制の全校生徒と保護者、教職員に向けて発表した。比嘉さん役を務めた根間茉七(まな)さん(16)は「やってよかった。とてもいい経験になった」と語った。

 発表を見守った保護者は、中学時代に不登校だった子どもが今回の朗読劇を通して笑顔が増え、家で学校の話をするようになったと喜び「成長を感じた。互いに認め合っていて、とてもいいクラスだね」と目を細めた。生徒たちは沖縄戦について学び、平和について考え、人前で発表できた経験を今後の人生に生かしていく。
 (照屋大哲)