国際通りににぎわいが戻ってきた。楽しそうな観光客の笑顔がまぶしい。新型コロナが5類へ移行し、沖縄観光はさらに活気を取り戻しつつある。最初の緊急事態宣言から3年余。外出せず、人に会わず、最小限の生活は想像以上につらいものだった。
仕事や学びに加え、親しい人と会って話をしたり食事をしたり、映画やコンサートやスポーツ観戦などなど、生活の中のさまざまな「潤い」が私たちを支えてくれていることを痛感した。そして「観光」もその一つ。沖縄の美しい自然や文化、触れ合いの中で充電し、多くの人が元気になれる沖縄。改めて観光産業の魅力を実感する。
私自身も観光産業に携わった経験がある。2008年にオープンした県庁前の「ホテルロコアナハ」の出店計画から運営までの8年間を事業部長として担当させてもらった。県外の老舗ホテル出身のコンサルに指導を受けつつ、同業の皆さんやたくさんの方々に教えを受けた。新卒スタッフも多く、緊張感のある毎日は刺激的な学びだった。
忘れられない出来事がある。それは、ご夫婦で宿泊されたお客さまのことだった。楽しみにされていた初めての沖縄。ところが、奥さまが体調を崩され観光も全て取りやめ。スタッフは急ぎ近くの病院を探し、タクシーを手配するなど対応した。数日で回復されたものの、結局どこも観光できないまま、沖縄を後にされた。
しばらくするとお礼の手紙が届いた。「エレベーターや廊下のすれ違いざまにも、心配して声をかけてくれるスタッフの皆さん。家族のような温かい心遣いがホテル全体から伝わってきて、ほんとにうれしかったです。また必ず沖縄に行きます」。何も特別なことができたわけではないが、小さな心の触れ合いがうれしく、スタッフを誇らしく感じた。そして、この包み込むような、自然体の温かさが沖縄の魅力そのものなのかもしれないと思った。
観光産業は沖縄のリーディング産業であり、海外に向けた大きな成長の可能性を秘めている。今後は富裕層を含めた幅広い客層の受け入れが重要で、特に人材育成が急務だ。
人手不足の中、オンデマンド教育との組み合わせも必要だろう。さらに必要なのがスタッフの海外視察だ。質のいいサービスを体験することで自分の目指す方向を明確化できる。1社で実施するのは難しいが、県全体で継続実施することで、スタッフのモチベーションアップや定着化にもつながるだろう。ぜひとも実現を願いたい。