那覇空港に降りた瞬間感じるあのモワッと感、台風、カタブイ、カーチーべー…沖縄の「夏」を大解剖!


この記事を書いた人 Avatar photo 仲井間 郁江

 沖縄地方が25日梅雨明けした。

 モクモクと青空に浮かぶ入道雲にグラデーションが美しい青い海。長くて暑い夏の始まりだ。突然のスコールやカタブイ(片降り=局地的な雨)、そして台風も気になるところだ。観光客にとっても人気のシーズン。県民も観光客も知ってて損はない、沖縄の「夏」の特徴をまとめてみた。

(慶田城七瀬)

 

夏雲が浮かぶ空とビーチをジョギングする人=25日午前6時45分ごろ、宜野湾市の宜野湾トロピカルビーチ

■「とにかく蒸し暑い」

 梅雨が明けた沖縄は、太平洋高気圧の周囲をまわる風に、北上した梅雨前線へと向かう風が加わり強い南風、または、南西風が吹き始める。これを沖縄ではカーチーべー(夏至南風)と呼ぶ。暖かく湿った空気が流れ込みやすく、晴れて蒸し暑い日が多くなる。

 

カーチーべーの天気図

 沖縄気象台の白石幸嗣予報官によると、沖縄の夏はズバリ「平均的に安定して蒸し暑い」という。

 県外から那覇空港に降り立った瞬間、「モワッ」っと感じるあの空気。あの瞬間「沖縄に着いたー!」と感じる人も少なくないだろう。

 その暑さの理由は、近海を黒潮が流れる暖かい海に囲まれて海洋の影響を強く受けるからだ。

 那覇の平均気温を1年通して見てみると、平年値(1991年から2020年の30年の平均値)は、7月が29.1度と最も高く、1月が17.3度と最も低く、寒暖差は約12度。

 7月の最高気温と最低気温の平年値では、那覇は最高31.9度、最低27度で約5度前後の差だが、東京は最高29.9度、最低22.4度で約7度の差だった。

 暑さを感じるのには、気温のほかにも空気中の水分量(蒸気圧)と相対湿度も関係している。

 7月の那覇は、蒸気圧が31.1ヘクトパスカル、相対湿度が78%であるのに対し、7月の東京は、蒸気圧が25.1ヘクトパスカル、相対湿度は76%。

梅雨明けの空がまぶしい「国際通り」=25日、那覇市

■意外と少ない「猛暑日」
 全国の天気予報を見ていると、県外各地で35度以上となる「猛暑日」の予報をよく見かける。一方で、実は沖縄地方は「猛暑日」は少ない。

 猛暑日の数を調べてみると、1991年から2020年までに東京では猛暑日が99日あったのに対し、沖縄は2日しかなかった。

 ちなみに、これまでの観測史上で那覇の最高気温は35.6度だった。

  今年の夏はどうなる?沖縄の3カ月予報

 8月には台風の影響を受けやすくなるが、8月の台風発生数は平年値で5.7個に対し、沖縄への接近は2.2個と1年で最も多くなる。降水量も多くなる。

 今年は梅雨の時期にも台風が発生し、5月末から6月にかけ接近した台風2号は沖縄各地にも大雨や暴風をもたらした。

「デイゴが多く咲く年は台風が多い」などの言い伝えもあるが、今年はどのくらい発生するのかも気になるところだ。

 

 ウェザーニュースが6月6日に発表した2023年の台風傾向によると、5月までの2個を含む29個前後で平年よりやや多くなることが予想されている。台風の進路は、日本の南から東日本太平洋側を中心に、接近や上陸のリスクが高まる予想で、海面水温の高い海域を通る時間も長くなり、勢力の強い台風が多くなる傾向があるとして、警戒するよう呼び掛けている。

カタブイ(片降り)の空=2022年8月4日正午すぎ、那覇市泉崎

■晴れでも注意!カタブイで急な増水

 沖縄では夏の晴れた日に、カタブイ(片降り)という局地的に強い雨が降ることがある。風の弱い晴れた日に局地的に積乱雲が発生し大雨になる現象で警報を発表することもあるほどだが、時間が短く空間の規模も小さいため的確な予想が難しく、発表が現象直前となることもある。

 晴れた日に本島北部やんばるへ遊びに行ったら河川が増水していたー。というように、降ったことに気がつかないほど地域が限定されるカタブイにより、河川が急に増水することがある。川岸に取り残されて救助されたり、流されて溺れた事故も発生したりしている。

 特に川辺では下流で降っていなくても、上流で降った雨で急に増水することがあるという。白石予報官は「異変を感じたらすぐに水辺から離れてほしい」と話した。

大宜味村の「ター滝」。人気観光地でもあるが、急な増水で行楽客が取り残されるなどの事故も起きている。通常のター滝(左)増水後の滝つぼ付近(右)。

事故を防ぐには、早めにカタブイに気づき対策を取る必要がある。

白石予報官に気をつけるポイントを聞くと、

・雲が黒く近づいてくる

・雷が光ったりゴロゴロ鳴ったりする

・冷たい風が吹く

などがあるという。 

カタブイの仕組み

雲が近づくと黒く見え、雷の光や音は雨が降るサインでもある。また、海よりも暖まりやすい陸の空気が急速に上昇するので、海から空気が流れて風が吹き、地表近くが急に涼しくなるのだそうだ。予報官は「カタブイの特徴を知って、上手に対策をとってもらいたい」と呼び掛けた。

■室内でもキケン、熱中症

 熱中症対策も気をつけたいところだ。日も長くなり屋外で活動する時間が増えるが、消防庁のまとめによると、熱中症による救急搬送の統計では、住居での発生が(敷地内すべての場所を含む)が2018~22年、それぞれ約4割を占めている。屋内にいても油断は禁物だ。特に、高齢者などは気温の変化を感じにくく、気がつくと熱中症になっていることもあるという。

イメージ

 熱中症の危険性が極めて高くなると、気象庁と環境省が共同で熱中症警戒アラートを発表している。気温や湿度、日射量から推定する「暑さ指数」ごとに予防のために取るべき行動なども明記している。エアコンを利用する、強い日差しを避ける、屋外での運動を控える、水分をまめに補給する、などだ。

 白石予報官は「最新の気象情報と併せてチェックしてほしい」と注意を呼び掛けた。

熱中症アラートの画面

自然の力は偉大だ。沖縄の夏の特徴を少しでも知ることで、知識を味方に、安全に夏を楽しもう。