「沖縄戦の記憶継承プロジェクト―戦争をしない/させないために」(同プロジェクト実行委員会主催)の第6回講座が24日、那覇市泉崎の琉球新報社で開かれた。グスク研究第一人者の當眞嗣一さんが「戦跡考古学から沖縄戦を考える」をテーマに講義した。戦争の記憶が「人からものへ」と変わる時代だと説き、戦争遺跡や遺留品を保存・記録することの重要性を語った。同時に、記憶を継承する人の存在が不可欠であることを伝えた。
中世や近世の遺跡研究が主流だった考古学だが、「歴史を理解する上で沖縄戦を欠くことはできない」と戦跡考古学を提唱し、戦跡の文化財指定にも尽力してきた。これまで壕の内部や遺留品を戦跡考古学の手法で記録し、丁寧に沖縄戦の実相を読み解いてきた。
講座で當眞さんは、日本兵の鉄かぶとの事例を紹介した。写真を示し、考古学の手法で調べると、銃弾が内側から貫通していたと説明。不思議に思い体験者に聞き取りをすると、かぶと内部にある衝撃を抑える布に銃弾が跳ね返ってできた穴であることが判明した。事実と体験者の記憶をつなぎ合わせることで、戦争の実相を読み解くことができると説いた。
戦争体験者が減少し「人からものへ」と記憶の方法が変わっていく中、遺留品一つからでも当時の状況をありありと描くことができる戦跡考古学の重要性を指摘した。一方で「どのようにものに語らせるか考えないといけない。次なる戦争の準備にも使われかねない」との懸念も示した。ものだけでなく記憶を継承する人の存在が「非常に大事だ」と語気を強め、参加者らに思いを伝えた。
(金盛文香)