【深掘り】地価回復が鮮明となった県内路線価 上昇要因と見通しを専門家はどう見ているのか


この記事を書いた人 琉球新報社
22年連続で県内最高路線価となった那覇市久茂地3丁目国際通り=3日

 コロナ禍で低調だった県内標準宅地の評価基準額の平均値や県内路線価が3年ぶりに上昇基調となった。沖縄国税事務所が3日発表した2023年1月1日現在の各税務署ごとの最高路線価は、全てプラス2%以上の上昇率だった。コロナ禍の制限緩和で高まる観光需要により、地価の回復傾向も鮮明となった。

 那覇市の国際通りはコロナ禍で空き店舗が増えたが、現在はほぼ解消され、コロナ禍前のにぎわいを取り戻しつつある。22年連続で県内最高路線価となった那覇市久茂地3丁目国際通りは、対前年変動率が2.1%と3年ぶりにプラスに転じ、価格は下がる前の145万円に回復した。

 22年はコロナ下の行動制限が徐々に緩和されたほか、国の旅行支援により県内観光客が増加したことで、再び投資が活発化しつつあるとみられる。

 国土鑑定センター社長の仲本徹不動産鑑定士は、全体的な傾向として「押し上げているのは住宅需要だろう」と、コロナ禍でもプラスを維持してきた県内地価の状況を分析する。

 県内の持ち家の割合は1993年の55.9%から2018年には44.4%に減少。全国平均の61.2%を大きく下回る。一方で分譲マンションや戸建ての着工数はコロナ禍でも堅調だった。戸建ては木造が増えたことで価格帯が多様化し、マンションと合わせ選択肢が増える中で持ち家需要を取り込んだ。那覇市を中心に県外事業者の投資が続いていることも県内全体の押し上げにつながっているとみられる。

 仲本鑑定士は「観光は勢いが強い。コロナの不安はあるが、(感染症法上の分類が)5類となり制限がない中で収益力は伸びていく。現在も上がっている途中で、ホテル需要も考慮すると地価の回復は続くのではないか」見通した。一方で住宅需要については「押し下げるマインドが出てくるかもしれない。懸念材料は物価高と金利で、注視が必要だ」と指摘した。
 (謝花史哲)