駐車場がいっぱいで講義に間に合わない…大学が抱える長年の課題、学生がアプリ開発で解決目指す


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駐車場の満車率お知らせアプリの開発に取り組んでいる、沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科4年の(左から)崎山宗斗さん、新垣七海さん、玉城朝陽さん=6月16日、宜野湾市の同大学

 学生の7割近くが私用車通学をしているとみられる沖縄国際大学。大学駐車場の空き状況を事前に把握できず、駐車するまでに時間を費やして講義に遅刻する学生がいたり、大学周辺で渋滞が起きたりするなど、大学全体の長年の悩みだ。その課題を解決しようと、経済学部の学生らがAI(人工知能)を活用した空き状況を知らせるアプリの開発を目指し、試行錯誤を繰り返している。

 大学によると、大学は新たな駐車場の確保など改善に取り組んできた。現在は大学敷地内と周辺に計7箇所の駐車場があり、私用車で通学する学生に十分対応できるという。しかし、利用者は事前に駐車場ごとの満車率を把握できないため、多くが空きを探していくつかの駐車場を周回している。

 前津榮健学長は「大学の大きな課題。ずっと頭を悩ませている」と腕組みし、厳しい表情を浮かべる。大型商業施設の駐車場のように、空車状況を示す電光掲示板の設置案などがこれまでに提案されたが、高額な費用を前に実現できていない。

カメラの検知精度を上げるため、AIの学習データを手作業で修正する崎山宗斗さん(提供)

 その課題解決に昨年乗り出したのが、同学部地域環境政策学科4年の崎山宗斗さん(22)、玉城朝陽さん(22)、新垣七海さん(22)の3人だ。3人は駐車場向けに、2分おきに自動撮影するようプログラミングしたカメラを設置した。AIが画像に映った車を識別し、満車率を計算する仕組みだ。

 実験は昨年冬から開始した。「最初はそこまで苦戦しないと思っていた」(玉城さん)と言うが、実際には駐車数が増加するほど、AIの車の識別精度は落ちた。連なっている車はカメラ映像だと1台ずつの判別が難しく、日の反射や、地面と似ている色の車の識別も困難なことが分かった。

 そこで3人は、さまざまな方向から撮った車の写真を何千枚も用意し、コンピューター上で1台ずつ、車の輪郭を取ってデータ化し、AIに学習させて識別精度を向上させた。作業は現在も続いている。次第に精度は向上しているものの、タイヤやマンホールなど、車の部品に似た形も「車」として判断するなどの課題がまだあり、データ修正にも時間が掛かっている。

 崎山さんらは「卒業までに完成させたい」と意気込む。「AIに学習させる作業はとても地道で大変だが、(完成すれば)学生や大学の悩みが解消されると思うと頑張れる」。3人はパソコンに向き合い、データを打ち込んでいる。
 (嘉数陽)