建設事業者の8割が賃上げに前向き 慢性的な人手不足に加え、公共工事の加点制度が対応促す 県建設業協会の会員354社アンケート


この記事を書いた人 琉球新報社

 国が2022年度に公共工事の総合評価落札方式で賃上げ実施企業に加点する制度を導入したことを受け、県内249社のうち約8割の建設事業者が賃上げに前向きな姿勢を示していることが7日までに分かった。県建設業協会が会員354社にアンケートを実施した。慢性的な人手不足を背景に、制度改定を機に人材確保に向け賃上げの意識が企業側で高まっていることが鮮明になった。

 4月11日現在の回答を集計した。回答率は70%だった。

 総合評価落札方式は、入札者が示す価格と技術提案の内容を総合的に評価する。政府が21年に賃上げを行う企業から優先的に調達する方針を示し、国土交通省が22年4月以降の契約から総合評価落札方式による全ての発注工事に賃上げ加点を適用した。従業員に目標値(大企業3%、中小企業1・5%)以上の賃上げを表明した入札参加者に加点する仕組みだ。

 加点措置を受け、県建設業協会は県が同様の方式を採用した場合の意向を調査した。85社(34%)が「既に表明している」、117社(47%)が「表明する」と回答し、計81%が賃上げに対応する意向を示した。「表明しない」は47社(19%)だった。

 Bランク以下(予定価格7億2000万円未満)の会社でも37社のうち32社が「既に表明している」「表明する」と答え、前向きだった。

 賛成の自由意見では「建設業全体の賃金底上げのため、ある程度思い切ったスタートが必要だ」「若手技術者の確保など厳しい現状の改善に加点措置は必要だ」「既に実施している」などの声が寄せられた。

 一方、賃上げの意向を示さなかった企業からは「会社の費用負担になる。最低制限価格の引き上げが先だ」「決算状況では賞与は支給している。ただ資材価格の高騰など利益率の低下も考えられる。表明は困難だ」「受注高が減少する中で余裕がない」などの意見が上がった。

 同協会の源河忠雄専務理事は「業界としては積極的に賃上げを進めようという考えだ。県も導入することで底上げにつながることを期待したい」と見解を示した。その上で「人材確保のためにも適正な利益が出ることが大事だ。入札の見直しは必要で議論を始められるようにしたい」と話した。
 (謝花史哲)