沖縄戦の実相、児童と一緒に考えたい 学び直しのきっかけは後悔 牛島満司令官の孫から受け取った言葉も 那覇・神原小、石川博久校長


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「慰霊の日」に向けて、全校児童にオンラインで「戦争と平和」について話す石川博久校長=6月12日、那覇市の神原小学校

 沖縄戦を子どもたちに伝え、ともにこれからの生き方を考えたい―。那覇市立神原小学校の石川博久校長(56)は、仕事の合間を縫って沖縄戦の実相や継承のあり方を学ぶ学習会に参加している。沖縄戦に向き合えていなかったのではないかと省みて、学び直しを始めた。「慰霊の日」の前には、全校児童366人に沖縄戦の講話を行った。学習を通じて感じた「五つの問い」を児童に伝え、自分に引きつけて考える大切さを訴えた。

 6月12日朝。通常は10分間の「学級の日」に校長講話がある時間帯に、石川校長は「戦争と平和」のテーマで講話し、オンラインで全校児童に五つの問いを投げかけた。「日本の沖縄戦の目的は何だったのか」「なぜ持久戦にしたのか」「どうして当時の新聞は(負けているのに勝っているという)うそを書いたのか」「沖縄戦は78年前に終わった話なのか」「平和とはどのようなことか」。そして「平和な社会、世界にするために私ならどうするのか。自分ごととして考えて」と沖縄戦の事実を知ってほしいと伝えた。

 児童に話した「五つの問い」は、石川校長が沖縄戦を勉強する中で生じた疑問だ。教師歴30年を経て学び直すきっかけは、戦争経験を聞けないまま両親が他界したことへの後悔からだった。「忙しさを理由に、沖縄戦を直視できていなかった」と悔やんだ。

 浦添市内の小学校長だった昨年9月に、知人に誘われて首里城地下の第32軍司令部壕についての勉強会に参加した。講師の牛島満第32軍司令官の孫で、東京都公立小学校の教員だった牛島貞満さんから「戦争の事実を知って発信してほしい」と言われ、教師としてすべきことを考えた。

 石川校長は学校行事や学級活動などの「特別活動(特活)」研究に約20年携わり、「日本特別活動学会」の九州・沖縄の理事も務めている。特活は互いを認め合い、安心できる学級や学校をつくる子どもを育てることだといい、「特活の突き詰める先は、平和な社会をつくる子どもを育てること。今までやってきたことと、沖縄戦を学び平和について考えることとが重なった」。以降、校長職や特活研究の傍ら、月に2回の沖縄戦の史実や背景、継承の在り方などを学ぶ「沖縄戦の記憶継承プロジェクト」などに参加している。

 神原小は、人権教育の一環で平和学習を行い「安心できる社会をつくるために何ができるのか」について考える。児童はグループごとに、教師も外部講師を招いた学習会などから平和や命の大切さについて考えを深める。来年1月には学習発表会を予定。石川校長は「沖縄戦を考えることは、自分の生き方を考えることだと思う。子どもたちに年間を通して命の大切さを考えてもらいたい」と話し、子どもたちの今後を見据えている。
 (高橋夏帆)