「病歴さらけ出すのに勇気がいった」 ハンセン病回復者が頼れる地域医療を 那覇医師会が研修会 医療関係者に後遺症などを解説


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研修会に参加した医療従事者らに自身の「うら傷」を見せながら話すハンセン病回復者の会共同代表の平良仁雄さん(中央)=6月28日午後、那覇市東町の那覇市医師会館

 那覇市医師会(友利博朗会長)は6月28日、那覇市東町の同市医師会館で「ハンセン病の医療に関する研修会~地域でのケアについて~」を開いた。医師や看護師など医療関係者ら約30人が参加し、ハンセン病回復者の会共同代表の平良仁雄さんと同事務局長の神谷正和さんが、回復者が抱える後遺症や地域生活での課題などを解説した。

 研修会は、ハンセン病への医療従事者の理解を高め、高齢化が進む回復者が地域で安心して医療に頼れる環境の実現を目指して開いた。

 ハンセン病回復者は「うら傷(足底せん孔症)」と呼ばれる後遺症を抱える人が多い。自律神経障害による血流障害や知覚、運動障害によって、足が変形したり足裏の一部に裂傷ができたりする。

自身の経験を話すハンセン病回復者の会事務局長の神谷正和さん(左)=6月28日、那覇市東町の那覇市医師会館

 研修会では、実際に「うら傷」の治療に当たっている貴クリニック(西原町)の東盛貴光院長が、使用している薬品や包帯など治療の実例を示しながら解説した。平良さんも参加者の前で素足となり、自身の「うら傷」を示しながら、ケア方法などを明かした。

 また神谷さんは自身が介護認定を受けて要支援2の判定を得るまでの経験を語った。胆石摘出や胸部脊椎間狭窄(きょうさく)症の手術を受け、日常生活に困るようになり介護認定を受けたとし「過去の病歴をさらけ出すことはかなり勇気がいった」と訴えた。その上で現在の介護認定制度に後遺症のケアは反映されていないことも紹介した。

 国の誤った隔離政策が差別や偏見を生み、今もなお隠れて生活せざるを得ないため地域医療に頼れない回復者も多いことも説明し「高齢化が進み、不自由度は増している。回復者が置かれている現状を理解してほしい」と語りかけた。
 (佐野真慈)