社内SNS導入 働く時間削減を実現 富原加奈子(県経営協女性リーダー顧問)<女性たち発・うちなー語らな>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「社内SNSを全社導入しましょう」。ある日、私が働いていたりゅうせき商事の営業会議で管理職の一人が提案してきた。他のメンバーもぜひやってみたいという。部分導入してきた経緯もあり、便利なツールであることは分かっていたが、全社となるとかなりコストもかかる。当時の社員数は約300人。電話やメールに加えて、どれだけの費用対効果が見込めるのか。今でこそDX化が叫ばれ、導入組織も多いが、2015年当時は事例も少なかった。

 さらに、その前年にタブレットを管理職と営業職に導入し、ペーパーレス化を図ったばかり。初めは戸惑っていたものの、試行錯誤しながらも一生懸命使いこなしていた。そんな背景とメンバーの熱い思いを受け、全社導入を決めた。

 最初はメールとSNSが混在して混乱したものの、内部はSNS、外部はメールと明確化した。すると、社内の電話とメールが激減し、働く環境は大きく変化していった。情報共有のボリュームもスピードもアップした。

 スタンプ一つで返信するなど、定番の「お世話になっております」形式にとらわれず、リスポンススピードがより重視される。すると不思議と他の仕事の標準スピードも上がってくる。数字でイメージすると、例えば、1人1日6分の時間が軽減できたとする。100人だと600分=10時間。1カ月を出勤20日で計算すると200時間。年間では2400時間という驚きの時間になる。

 時間に対する意識が強くなると、会議や朝礼、ファイリング方法、仕事そのものの要、不要まで気になってくるもの。すると、6分が、60分、数時間と厚みを増し、気がつくと大きな働き方改革になってくる。

 りゅうせき商事は5年前と比較して1人当たり月10時間の時間削減を実現。有給取得率も大幅に向上した。生活は大きく変わり、時間と気持ちにゆとりも出てくる。

 そして、次に起こることに驚いた。資格取得など将来に備えての自分磨きが活発になり、自主的な社内勉強会も始まった。昇格や任用替えの受験者も大幅に増えた。家族旅行の話もにぎやかに聞こえてきた。

 最近よく聞く言葉に「タイパ」(タイムパフォーマンス)がある。かけた時間に対してどのくらいの効果や価値があったかを指す「時間対効果」のことだという。働き方改革とは、まさに仕事のタイパを向上させること。そして、心身ともにゆとりのある中で、一人一人が最も大切にしたいことを大切にできる時間を増やすこと。そんな幸せな生活のために、組織も個人も、自らが率先して変化の震源地となり、新たな取り組みにチャレンジしていきたい。