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300年受け継がれる沖縄伝統の組踊、基本の「唱え」を学べるCD 構想10年、眞境名会長自ら録音


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「眞境名正憲 組踊唱え教本」を制作した眞境名由康組踊会の(左から)名嘉正光、眞境名正憲会長、金城陽一=7月27日、琉球新報社

 眞境名由康組踊会(眞境名正憲会長)が、組踊の唱えや地謡の音源を収録したCD付きの教本「組踊唱え教本」を制作した。これまで、発音表記や、口伝で伝えられてきた唱えを音で繰り返し学ぶことできる。眞境名会長は「唱えは組踊の基本。唱えの型を音で学んでほしい」と正しい継承と技芸の向上に期待した。

 教本は、地謡と唱えを録音したCDと、唱えのせりふや現代語訳、他の組踊本との解釈の違い、発音のローマナイズ表記などが記載された台本のセットになっている。収録した演目は「執心鐘入」や「花売の縁」など代表作全12作品で、全て眞境名会長の唱えを録音した。せりふごとにトラック番号があり、細かく聞き返すことができる。10年前から構想を温め、約3年がかりで今年完成した。

「組踊唱え教本」の台本。CDトラック番号、せりふ、発音のローマナイズ表記、現代訳、他の本での解釈が並んでいる

 約300年前に作られた組踊を受け継ぐ方法は、これまでも模索され続けてきた。せりふの意味や発音の表記、舞台上の配置、近年では記録映像などさまざまな方法がとられてきたが、唱えの型を耳で学ぶことが難しかった。眞境名会長は「(これまでの方法では)若衆と女の唱えの違いがはっきりしないこともあった」と振り返る。「あくまでも眞境名由康はこう教えたという一つの例だが、唱えの型を理解するにはいい」と話す。制作に関わった同会の金城陽一は「正憲先生の唱えには表情がある。どうしても残しておきたかった」とも話した。

 台本には、眞境名由康と同時代を生きた実演家たちが残した言葉なども収録。眞境名会長は「眞境名由康以外の弟子たちも師匠を知ることができる」と話す。「組踊は沖縄の芸能のルーツ。工夫しながら伝えていきたい」と語った。

 教本は2万5千円。芸能関係者には特別価格もある。問い合わせは電話090(3836)1485(名嘉)。
 (田吹遥子)