眞境名由康組踊会(眞境名正憲会長)が、組踊の唱えや地謡の音源を収録したCD付きの教本「組踊唱え教本」を制作した。これまで、発音表記や、口伝で伝えられてきた唱えを音で繰り返し学ぶことできる。眞境名会長は「唱えは組踊の基本。唱えの型を音で学んでほしい」と正しい継承と技芸の向上に期待した。
教本は、地謡と唱えを録音したCDと、唱えのせりふや現代語訳、他の組踊本との解釈の違い、発音のローマナイズ表記などが記載された台本のセットになっている。収録した演目は「執心鐘入」や「花売の縁」など代表作全12作品で、全て眞境名会長の唱えを録音した。せりふごとにトラック番号があり、細かく聞き返すことができる。10年前から構想を温め、約3年がかりで今年完成した。
約300年前に作られた組踊を受け継ぐ方法は、これまでも模索され続けてきた。せりふの意味や発音の表記、舞台上の配置、近年では記録映像などさまざまな方法がとられてきたが、唱えの型を耳で学ぶことが難しかった。眞境名会長は「(これまでの方法では)若衆と女の唱えの違いがはっきりしないこともあった」と振り返る。「あくまでも眞境名由康はこう教えたという一つの例だが、唱えの型を理解するにはいい」と話す。制作に関わった同会の金城陽一は「正憲先生の唱えには表情がある。どうしても残しておきたかった」とも話した。
台本には、眞境名由康と同時代を生きた実演家たちが残した言葉なども収録。眞境名会長は「眞境名由康以外の弟子たちも師匠を知ることができる」と話す。「組踊は沖縄の芸能のルーツ。工夫しながら伝えていきたい」と語った。
教本は2万5千円。芸能関係者には特別価格もある。問い合わせは電話090(3836)1485(名嘉)。
(田吹遥子)