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モノレール社の経営健全化「3両化でも不十分」 県の包括外部監査が財務分析 支援の在り方に厳しく意見


この記事を書いた人 琉球新報社
3両化のため新造され、トレーラーに引かれて運び込まれる新車両=1月10日未明、那覇港付近

 県は9日までに、弁護士ら外部有識者が県の行財政を監査する2023年度包括外部監査の報告書を公表した。報告書では、沖縄都市モノレール(ゆいレール、渡慶次道俊社長)は長期的な債務超過に陥っており、3両化を果たしてもモノ社独自の経営努力のみでは抜本的な経営健全化には不十分だと指摘。県はモノ社の経営改革を図るため、営業収益の増加に向けた方策を積極的に講じる必要があると提言した。

 また、モノ社に対して金融支援を漫然と継続したり、支援の規模が安易に拡大したりしないように求める意見も付けた。報告書は「県のモノ社に対する金融支援の財政的リスクや現在の経営に至った理由、将来の見通し」などの説明が不十分だとして、説明責任を果たして県民理解を得るよう意見した。

 モノ社は県と那覇市、浦添市などが出資して設立した第三セクターで、03年8月に開業した。県など3者は沖縄振興開発金融公庫と共に、経営支援として累計124億円の無利子融資を実施してきたほか、浦添市への延長整備に当たり、3者で合計約29億円の追加出資などを実施してきた。

 さらに3者は20年度にモノ社の約27億円の債務超過をDES(貸付金の株式化)によってほぼ解消したが、新型コロナウイルスの影響により22年度は再び14億9千万円の債務超過に陥った。

 一般的に鉄道事業は初期投資が膨大で開業後30~40年を経てようやく累積赤字が解消できる。報告書によると、モノ社も開業時の借り入れ約320億円の返済負担が重く、乗客数が増加して業績は堅調でも資金繰りは厳しい。さらに開業後15年が経過して施設老朽化やさらなる乗客増への対応が今後財務負担になる上、物価高騰などの影響でモノ社の債務が完全に解消される見通しは厳しいとした。

 モノ社は経営改善に向けて21年3月までに中期経営計画を策定。資金繰りの安定化に向けて既存の債務を劣後ローンとして借り換える「DDS」の実施などを検討する。

 県都市計画・モノレール課は本紙取材に「報告書にある通り、モノ社への支援は漫然と行うのではなく、必要な支援を精査して実施する。経営基盤の安定化に至れば、モノ社の自主事業として運営できるよう協力したい」と述べた。
 (梅田正覚)