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「シーサーが生き物だったら…」から生まれた絵本、つながる縁 教え子に再会も 那覇・渡嘉敷


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社
「やねにあがったまぎら」の著者の新垣光枝さん(左)と絵本の絵を担当したKANさん

 【那覇・渡嘉敷】シーサーをモチーフに人権や多様性などの意味合いを含めた内容の絵本「やねにあがったまぎら」が今年4月に発刊され、絵本を介して人の縁が広がっている。著者で元幼稚園教諭の新垣光枝さん(75)=渡嘉敷村=は「『どんな人でも幸せになれる。幸せになるために生まれてきた』という思いを多くの人に届けたいと絵本を作った。主人公のまぎらには人と人を結び付ける力がある」と目を細めた。

 「シーサーが生き物だったら」と想像したことが本作の出発点だという。主人公の「まぎら」という生き物は、バランスが悪い格好をからかわれたり、仲間はずれにされたり、自信をなくして暮らす。だが、気持ちをわかってくれる相手に巡り合い、自分にとって居心地の良い居場所を見つけて幸せになり、屋根の上から人々を見守るシーサーになる。

上原妙子校長の読み聞かせに耳を傾ける児童ら=6月12日、那覇市高良の市立高良小学校体育館(提供)

 絵本の絵を手がけた似顔絵イラストレーターのKAN(本名・漢那正)さんは元学校教諭で、新垣さんの次男の担任だったという縁。6月には那覇市立高良小学校のお話朝会で、上原妙子校長が同絵本を大型スクリーンに映し出しながら読み聞かせをした。職員のひとりが上原校長に本紙で掲載された絵本発刊に関する記事を紹介し、新垣さんが絵本を寄贈した。

 学校に招かれた新垣さんは、同校の教諭で以前に渡嘉敷村内の小学校に赴任していた教諭と再会した。新垣さんを「お母さんのような人」と慕っていたといい、感動の再会を果たした。また、新垣さんは渡嘉敷幼稚園在職中の教え子の子が同校に在籍していることを知り、児童にも会えた。

 新垣さんは「まぎらは昔本当に生きていたのではないかと思えるような、魂があるように思えてきた。誰ひとり取り残さない世の中になってほしい」と語った。

 新垣さんは、絵本を福島県郡山市在住の知人や東日本大震災の被災地の宮城県気仙沼市にも寄贈している。絵本は書店や琉球新報STOREで発売中。
 (中川廣江通信員)