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【連載】新交通のBRTやLRT、バスとの乗り換えやすさ追求 公共交通利用率が鍵 延伸の可能性<ゆいレール開業20年課題と展望・下>


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 2021年度に県交通政策課が実施した沖縄都市モノレールの延伸調査で、検討対象となった5ルートはいずれも「収支赤字」の推計だった。前回18年度の調査から需要の増加は見込める内容となったが、採算性や導入コストに対する経済効果を示す「費用便益比」(B/C)は変わらず厳しい評価となった。

 採算性やB/Cは、利用者数や時間短縮効果、整備費用などを基に算出。採算性は年間2億5千万~5億7千万円の損失。B/Cは0・15~0・45で事業化の目安となる「1」には届かなかった。

 地域の公共交通利用率も数値を左右しており、同課は延伸を想定する地域での路線バス利用の低さが下振れする一因と分析する。担当者は「要因はそれだけではないが、バス利用が上がれば、改善が見込めるだろう」と指摘した。

 県民のバス利用は長く議論されてきた課題だ。ゆいレールでは、おもろまち駅や赤嶺駅を中心に結節点としてバスとの連携による利用者増が期待されてきた。しかし、各駅別1日当たり平均乗客数をみると、首里や儀保、古島、奥武山などはほぼ横ばい。結節を利用した乗降が延びていることはうかがえない。

 赤嶺駅は徐々に伸びてはいるが、想定した集客力に至っていない。沖縄都市モノレールの渡慶次道俊社長も「努力すべきは赤嶺駅しかり、定時交通としての結節点をどう認知させるかにある」と改善点を見つめる。

 ゆいレールの延伸について同課は「今後も可能性を追求する必要がある」とした上で、バス高速輸送システム(BRT)や次世代型路面電車(LRT)などを含めて新たな交通システムを幅広く検討していく方針だ。そのため20年度から圏域ごとで交通システムを考える協議会を設立し、市町村と研究する取り組みを始めた。中北部で先行し、23年9月から南部でも始める。7月には、将来的な人口減や高齢者の増加、運転手不足に備えた県地域公共交通計画を策定する県地域公共交通協議会も設立した。

 琉球大学工学部の神谷大介准教授(社会システム計画学)によると、これまでバス会社同士のダイヤ調整などは独禁法の考え方から許されず、県や市町村は路線調整に関われなかったという。ただ規制が緩和される法改正があり「県交通計画の中で議論が進むだろう」と期待する。

 定時制に課題を抱える県内の路線バス。深刻な交通渋滞も起因し、バス離れがさらなる交通混雑を引き起こす悪循環となってきた。今後の南北間鉄軌道導入の可能性を広げるためにも、さらなる公共交通の活性化、移動手段の複合化の促進が鍵を握る。
 (謝花史哲)