新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021年3月からアルコール依存症(ア依存)の外来や入院治療を停止していた国立病院機構琉球病院(金武町)が、6月からア依存症治療を再開した。県内ではアルコールを含む依存症専門医療機関は3カ所で琉球病院はその1つ。北部圏域で酒に悩む人々のため、同院では自助グループや保健所などとの連携を再開している。
同院では、依存症治療で有名な神奈川県の久里浜医療センターから、真栄里仁医師が副院長として6月に就任した。毎週火曜日には予約が不要で、新規外来の上限を決めていない診療日を設けている。当日入院にも対応しており、7月末現在は14人の患者が入院している。
連携が重要に
治療は、苦しい離脱症状から回復した後、勉強会やミーティングなどの治療プログラムを受けながら、断酒欲求を和らげる断酒補助薬「アカンプロサート」を服薬していく。治療と並行して、断酒会やアルコホーリクス・アノニマス(AA)などの自助グループへの参加も促していく。
通院と薬物療法、自助グループへの参加というの3本柱が全て継続するほど治療成績が高くなるため、関係機関の連携が重要になる。
先天的影響も
真栄里医師によると、アルコール依存症者は不安やうつなど不快な感覚を取り除くために飲酒する傾向があるが、「生まれつきの体質などの影響も意外と大きい」という。海外などの研究では、ア依存患者の約6割に先天的な体質などの影響があると考えられている。真栄里医師は「自己責任以外のどうにもならない要因もある」と指摘し、酒と適切に向き合う重要性を説く。
治療については、入退院を繰り返すと効果が下がりやすく、入院が3回目以降になると、断酒率は1割ぐらいまで下がるという。長期の依存により肝硬変が発症すると、認知機能にも影響が出て治療プログラムの効果が低下する恐れもあるという。
受診したい時
そのため、断酒を継続するためには、早期介入が重要だ。
従来は、断酒に向き合うには家族や仕事などを失う「底付き」体験が必要とされていたが、研究によると断酒率が下がることが示されているという。同院が火曜日に予約不要の受診日を設けた理由でもある。
真栄里医師は「本人が受診したい時に対応することは医師にとってもチャンス。沖縄は県外に比べて依存症患者の年代が若い印象があるので、気になる人は医療機関を受診してほしい」と、呼び掛けた。
同病院の退院患者を受け入れてきた石川断酒会の當山康隆会長は「治療の入り口が増えることは、断酒を継続する仲間が増える大きなメリットがある。飲酒について悩む人々にも治療再開が広く知れ渡ってほしい」と期待した。
(嘉陽拓也)