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【深掘り】中国の訪日団体旅行が解禁 インバウンドが本格回復、それでも観光関係者が素直に喜べないわけとは


この記事を書いた人 琉球新報社
中国東方航空の上海線で那覇を訪れた個人旅行客ら=17日、那覇空港

 中国からの団体客の入域が10日、解禁された。11日以降、沖縄在住者は旅行会社を介せば福岡総領事館で面接を受けなくても査証(ビザ)の取得が可能となっており、利便性が高まったことで多くの相互往来が見込まれる。中国国際空港も9月17日から那覇-北京線を再開する予定で、今後は中国から団体客を含めインバウンド(訪日客)が増加しそうだ。

 県内事業者からは「より大きな観光収入が期待できる」と歓迎する声が上がる一方、中国の春節などに観光客が大挙して押し寄せることを懸念し「年間を通してインバウンドを平準化してほしい」との声も上がる。

 ■中国客の消費単価に期待 受け入れ能力には不安

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は「消費単価が高いインバウンドの回復に期待は大いにある」とした上で「観光産業は今、人手不足に陥っている。多くの観光客を受け入れることができるか不安もある」と複雑な表情を浮かべた。

 入域観光客数が過去最高の1千万人を記録した2018年度の県の外国人観光客実態調査では、大型クルーズ船による外国人海路客の37%(約44万人)は中国からの観光客だった。そのうち約6割はバスツアーで沖縄観光に繰り出していたが、滞在時間は長くても半日がほとんどで、観光消費に与える影響は限られていた。

 一方、空路で沖縄を訪れた中国客の観光消費額は1人当たり12万8280円。全体平均の9万119円より約3万8千円高い。特に土産品に占める割合が高く、約5万1千円を消費していた。

 中国客の消費は県内小売りの売上増につながる。コロナ前に多くの中国客が訪れ、化粧品やアクセサリーなどの売れ行きが好調だった那覇市のデパートリウボウの担当者は「館内の外国語表記の強化や、中国版SNSや旅行サイト向けにメールでのクーポン配布などを行っている」と説明し、北京をはじめ中国との直行便再開でPR強化を図る考えを示した。

 ■「満足度下げかねない」 平準化は可能なのか

 一方、沖縄観光の受け入れ体制はコロナ禍の直撃を受け、離職などで脆弱な状態が続いている。ハンドリング(地上支援業務)や保安検査員などの人手不足から、那覇空港の国際線は新規路線の就航や増便が難しい状況が続く。9月に那覇-北京線を再開させる中国国際航空の沖縄支店は「ハンドリングの人手不足から、北京路線はコロナ前に運航していた時刻が難しく、調整が必要だった」と明かした。

 観光客層を見極めたプロモーションが必要だとの指摘もある。県バス協会の山城克己会長は「修学旅行シーズンはただでさえ(観光バスの)人手が足りない中で、海外からの団体客の対応は厳しい。年間を通しての平準化が必要だ」と話した。

 おきなわワールド文化王国・玉泉洞などを運営する南都の大城宗直社長も観光客の平準化が鍵だと指摘。「受け皿が弱っている状態では満足度が下がってしまい、リピーターにつながらない。シーズンコントロールが必要だ」と訴えた。

 (與那覇智早)