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いつか故郷での研究も アルゼンチン沖縄県系2世の考古学者・幸地さん 難関・国家研究者を目指す


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人骨組成を分析する考古学者の幸地さゆりさん

 「個人的な夢は、いつか沖縄の考古学研究に参加すること」と話すのは、沖縄県系2世の考古学者、幸地さゆりさん(31)。ブエノスアイレス大学の人類学部を卒業後、同大学の研究所で働きながら国家研究者を目指し研究を続けている。博士論文では、アルゼンチンとチリの国境に位置するパタゴニアの最南端にある、ティエラ・デル・フエゴ島の2500年前から20世紀初頭までの狩猟採集民の食文化と、その社会と環境の関係を提出した。

 考古学者の彼女にとって今年は重要な年を迎えている。考古学者が国に研究プロジェクトを提出し、評価の点数が上位10位以内だと国と契約ができるという。さゆりさんは5年前に10位以内になったことで、国と契約を結んでパタゴニアの狩猟採集民の研究をしてきた。

 今年は契約更新をかけた年で、応募した博士研究員選抜審査の結果が出る。科学省で最も厳しい審査で、博士論文と大学助教の審査を待っている。「長期的には国家研究者になることを希望している」という。トップ3に入れば国家研究員となって研究でき、目標の一歩になる。

 提出した研究プロジェクトのテーマは「考古学的研究に応用される安定同位体分析」だ。「安定同位体分析は専門の考古学だけでなく、多くの研究テーマに応用できる。古生態学、法医学分析、保存学など多くの分野で利用されている。この手法を使用すれば特定の社会はもちろん、数千年前の人類がどのように生きていたかを知ることができる。アルゼンチンの科学にもっと広く使われるように、この技術についてもっと研究したい」と話した。

 さゆりさんは2016年に3カ月間、嘉手納町で研修した際に、読谷村の博物館で1週間研修した経験もある。「いつかは沖縄の考古学研究に」と故郷での研究に対する思いも語った。

(安里三奈美通信員)