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活気に満ちた中国深圳市 若い世代に海外視察を 富原加奈子(県経営協女性リーダー顧問)<女性たち発・うちなー語らな>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 経済特区の指定を受けたのが1980年。わずか40年余りで人口3万人の漁村が東京と同規模の1400万人の大都市に急成長した。そんな夢のような発展を遂げたのが、香港の北に位置し、中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳(しんせん)市だ。

 2019年12月、県経営協主催の第38回第一線管理監督者研修は女性リーダー部会と共催とし、女性13人を含む総勢37人が参加した。香港から電車やフェリーでも30分ほどの距離だが、まるで別世界で衝撃的だ。

 車窓から見えるのは切れ目なく続く真新しい超高層ビル。当時の一番高いビルは115階建てで高さ600メートル。天候によっては最上階に雲がかかる。整備された道路には電気自動車が走り、レストランでは配膳ロボットが働き、現金を使わない生活の中で、顔認証決済の無人コンビニやキャッシュレススーパーなど最先端の設備が次々と導入されている。

 その一つ一つが刺激的だが、それと同じく刺激的だったのが、エネルギッシュな若者たちと、その仕組みだった。清華大学深圳校内に設立されたスタートアップ支援企業のインキュベーション施設は活気にあふれ、新規事業や新商品創出のためのハッカソンイベントなどを運営するコミュニティー「スタートアップサラダ」のオープンイノベーション環境も素晴らしかった。

 深圳の平均年齢は33歳。地域のコミュニティーに入るのが難しい中国だが、深圳には「深圳に来れば、みんな深圳人」という言葉があり、競争は厳しくとも平等にチャンスがあるこの地に、チャイニーズドリームを夢見る若者が全土から集まり、国からも手厚い支援がある。さらには、失敗に寛容で、何度も挑戦できる文化が若者たちを後押しする。結果、中国国内の特許の約30%がここ深圳で生まれているという。

 さて翻って、私たちは地元沖縄の若者たちにどれだけの環境を提供できているのだろうか。多くの課題と反省点とともに、さまざまなヒントも見えてくる。ぜひとも海外を見る機会を提供したい。

 これまで各組織が企画する海外視察は上位クラスが参加するイメージが強かったが、若い世代が参加できる企画ができないだろうか。海外を学ぶことで、沖縄の実態をより明確に把握し、課題の改善や新規事業など若い発想にもつながるだろう。産官学の連携も、まずは日常的な交流を若い世代から始めるのはどうだろうか。

 異業種交流を通してベクトルが共有される中、沖縄版ハッカソンやイノベーションエコシステムにつながることを期待したい。成功の後ろにはたくさんのチャレンジがある。失敗を恐れず進み続ける沖縄の風土をみんなで作っていきたい。