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「夏場は窓を開けられない」 八重瀬町の養豚場の臭気問題、再び焦点に<ニュースのつぼ>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【八重瀬】南部広域行政組合のごみ処分施設計画が5月に白紙撤回された八重瀬町の具志頭畜産(新垣武社長)の周辺で、地域住民が豚舎からの臭気に悩まされている。同社が町外移転した跡地に施設を建設する計画だったが、撤回を受けて、同社は移転せず同地で経営を続ける見通しだ。長年の地域課題だった臭気対策が、再び焦点化している。住民側は「臭気軽減に有効」として豚の頭数削減を求めている。

母豚と子豚合わせて約9400頭を飼育する具志頭畜産の豚舎=8月30日、八重瀬町具志頭

 具志頭畜産は1964年、前身の「アジア畜産」として創業し、81年に琉球協同飼料(上門恒夫社長、南風原町)の傘下に入った。飼育数9400頭で年間4万5千頭の子豚を出荷しており、県内の肉豚出荷頭数で約15%のシェアを占めるという。

 創業当初は周辺で豚を飼育する家庭も多く、臭気は問題にならなかったが、宅地開発や時代の変化に伴い苦情が出るようになった。町と同社、周辺4自治会(港川、具志頭、長毛、長毛団地)で構成する「具志頭畜産環境保全対策連絡協議会」(3者協)は2006年から、年1回の臭気測定を踏まえ改善策を協議している。町はこれまで、基準値の臭気指数15を超えた12回、同社に改善勧告してきた。同社は、10年から3~4年で5千頭を削減し、臭気軽減に有効な光合成菌を導入するなど対策を取ってきたと説明する。

 港川区民でつくる港川悪臭対策委員会の大城達也委員長は「臭いは一向に改善しない。洗濯物を干せず、夏場も窓を開けられない。資金を投じて抜本的に対策してほしい。町ももっと強い姿勢で(同社に)対応してほしい」と求める。

 ごみ処分施設計画に伴う同社移転により、臭気から解放されることに住民の一部は望みをつないでいたが、計画は撤回された。

 7月に開かれた3者協では、住民側が「さらに頭数を減らす以外、臭気改善の道はない」と同社に頭数削減を強く迫った。新垣社長は取材に対し「時間はかかるが、グループ内の施設に豚を移せるかなど削減を検討する。地域を大事に、経営を継続していきたい」と語った。

(岩切美穂)