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最高裁判決、新基地建設に“お墨付き” 都道府県知事の裁量を著しく狭める


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埋め立てが続く名護市辺野古のキャンプシュワブ沖の新基地建設現場(辺野古側)=2023年9月4日、名護市辺野古から撮影

 沖縄県の不承認を取り消した国土交通相の「裁決」訴訟に続き、国交相が県へ承認するよう求めた「是正の指示」訴訟でも県の敗訴が確定した。最高裁は県が主張した不承認の要件には踏み込まず、形式的に国の新基地建設に“お墨付き”を与えた格好だ。

 最高裁判決は、審査庁である国交相が不承認取り消し裁決をした場合、県は裁決に従って承認すべき義務を負うと判示した。都道府県知事の裁量を著しく狭めるものだ。

 工事主体の沖縄防衛局は、本来は国民の権利救済を目的とした行政不服審査制度を使って国交相へ審査請求を行った。行政法の専門家から“私人なりすまし”との批判がやまないが、最高裁は防衛局の私人同様の権利救済を追認。行政不服審査法のみを尊重した形だ。県が主張していた公有水面埋立法の不承認要件には立ち入らなかった。

 3月の福岡高裁那覇支部判決は県の訴えを退けたが、是正指示の判決で「県は裁決に拘束されない」と認め、不承認の適否を判断していた。県側代理人が最高裁判決を「前段階に後退してしまった」判決と捉えたのも無理はない。

 一方で高裁判決とは異なり、最高裁判決は県の不承認に裁量の逸脱・乱用があったとは断じなかった。辺野古住民らが提起している訴訟の弁護団の一人は、この点に着目し「まだ闘う余地はある」と受け止める。
 (金良孝矢)