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辺野古裁判、敗訴確定 沖縄県、次の一手に苦慮 庁内に「承認やむなし」の声も 新基地反対の民意と板挟み


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
米軍キャンプ・シュワブ沿岸=4日、名護市瀨嵩

 名護市辺野古の新基地建設を巡る2件の訴訟は、県の敗訴が確定した。設計変更を新基地建設阻止の「切り札」としてきた県は一転して承認を迫られる。県の対応が焦点となる中、玉城デニー知事は4日の会見で申請を承認するかについては言及を避け、判断に慎重な姿勢を見せた。

門外に追い出す

 判決が厳しいものになることは想定されていたが、県による法令判断の適法性を検討することなく、国土交通相の判断には従わなければならないという司法判断に驚きが広がった。

 県側代理人の加藤裕弁護士は公有水面埋立法上の要件の適合性に踏み込んで審査していた高裁判決について「裁判所の門の中に(県を)入れて判決を示した」と説明した。比べて今回の最高裁判決は「後退した。県を門外に追い出した判決だ」と問題視した。

 防衛省幹部は「ボールは県に渡ることになる。その対応次第だ」と語った。その上で、県が承認判断を先送りしたり、検討に時間をかけたりする選択肢について「法治国家としては到底考えられない」とけん制した。

 仮に県が設計変更を承認した場合、残る2訴訟も「続ける意味がなくなる」(県幹部)関係性にある。

板挟み

 県は、判決が厳しいものになることを見据え、4月頃から水面下で対応策の検討を進めた。今後の対応として挙げられている三つのパターンなども俎上(そじょう)に載ったとみられる。

 県庁内では「最高裁判決に従わないのは考えられない」などと承認論がくすぶる。一方、市民団体からは別の理由による再度の不承認や、撤回を訴える声が上がる。

 知事周辺の一人は辺野古反対を訴える県民の声と、行政手続き上「承認やむなし」の庁内の一部の受け止めの間で「知事は板挟みになっている。相当苦しいだろう」と置かれた現状を語った。

 野党県議は「法治国家にある行政のトップとして判決に従うのが当然」としつつ、辺野古移設反対の民意に寄って立つ玉城知事が承認することは「考えづらい」とみる。

 別の野党県議は代執行訴訟に持ち込むことで「再び世論を喚起することを狙うのではないか」と指摘。代執行となれば「『強制』の文字がメディアに躍る。選挙を控えて世論への影響は避けられない」と神経をとがらせる。

 与党幹部の一人は「事業そのものにお墨付きを得たなどと国は印象操作をするだろう。判決が出ても不適切な事業である本質は変わらない」と指摘し「これだけ裁判を重ねても県民の理解を得られていない現実に国が向き合うべきだ」と吐き捨てるように言った。
 (知念征尚、佐野真慈、明真南斗)